さつまいもは海外でも大人気!焼き芋ブームの秘密と日本の品種改良に迫る

食欲の秋という言葉がありますが、皆さんは秋になると食べたくなるものはありますか?

筆者が真っ先に思い浮かべるものの一つが、焼き芋です。

スーパーに買い物へ行くと、店頭から漂ってくる焼き芋の甘い香り。ついつい足を止めて、買いたくなってしまうことはありませんか?

最近では、昔ながらのホクホクした焼き芋だけでなく、蜜があふれるほど甘く、スプーンですくって食べられるようなねっとり系の焼き芋も人気です。冷やして食べる商品も登場し、焼き芋の楽しみ方は以前よりもずっと広がっています。

さらに驚くことに、日本産のさつまいもは海外でも注目されています。かつては身近なおやつだった焼き芋が、今では日本の食文化を代表する商品の一つになりつつあるのです。

なぜ、焼き芋はこれほど人気になったのでしょうか。そして、日本のさつまいもは海外でどのように受け入れられているのでしょうか?

今回は、焼き芋ブームの背景から、さつまいもの品種改良、戦中・戦後の食文化、海外での人気まで掘り下げてみたいと思います。

現代の焼き芋は一大ブーム?人気が広がった4つの理由

焼き芋と聞くと、冬の寒い日に「いしや〜きいも〜」という声を響かせながら走る移動販売車を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。

ところが、現在の焼き芋はそれだけではありません。スーパーや専門店で手軽に購入できるようになり、季節を問わず楽しめる商品へと変化しています。

一般財団法人いも類振興会の理事長が解説した記事でも、2000年代初頭からの焼き芋ブームについて、甘くてねっとりした品種の登場や、スーパーなどに設置された電気式焼き芋機の普及が大きな要因として挙げられています。

参考:農畜産業振興機構「最近の焼きいもの動向」

では、具体的にどのような理由があるのでしょうか。

1. 品種改良によって焼き芋がスイーツへと進化した

焼き芋の人気を語るうえで欠かせないのが、さつまいもの品種改良です。

昔ながらの焼き芋といえば、割ると黄色い果肉が現れ、ホクホクとした食感を楽しむものが主流でした。もちろん、今でもこのタイプが好きな人は多いでしょう。

しかし、近年は「紅はるか」「安納芋」「シルクスイート」など、甘みや食感に特徴のある品種が広く知られるようになりました。

例えば、紅はるかは、じっくり加熱すると強い甘みとねっとりした食感を楽しめる品種です。安納芋も、クリーミーな食感と濃厚な甘みで知られています。一方、シルクスイートは、しっとりとなめらかな口当たりが特徴です。

これらの品種は、焼き方や貯蔵状態などによっても味わいが変化しますが、うまく焼き上げると、砂糖を加えていないのに驚くほど甘く感じられます。

まるでスイートポテトやクリームのような味わいを楽しめることから、焼き芋は単なる野菜のおやつではなく、スイーツの一つとしても人気を集めるようになりました。

こうした品種の多様化が、焼き芋の魅力をさらに広げているのです。

2. スーパーやコンビニで手軽に買えるようになった

どれほどおいしい食べ物でも、買える場所が少なければ、日常的に食べる機会は限られてしまいます。

その点、現在の焼き芋は購入しやすさが大きな魅力です。

スーパーなどでは、店頭に設置された電気式の焼き芋機を使い、焼き上がった商品を販売するところが増えています。専門店に足を運ばなくても、普段の買い物のついでに購入できるようになりました。

焼き芋を販売する店舗にとっても、店頭から漂う甘い香りが商品の存在を知らせてくれるという利点があります。

買うつもりがなかったのに、香りにつられて思わず手に取ってしまう。そんな経験がある人もいるのではないでしょうか。

また、焼き芋は基本的に、さつまいもを焼くだけで楽しめるシンプルな食品です。凝った調理をしなくても食べられるため、手軽なおやつとしても便利です。

かつては移動販売車を探して買うイメージが強かった焼き芋ですが、今では日常の買い物の中に自然と溶け込んでいます。

3. 健康を意識する人にも選ばれている

焼き芋の魅力は、甘さだけではありません。

さつまいもには食物繊維やビタミン類、カリウムなどが含まれています。食物繊維を摂取できることや、手軽にエネルギーを補給できることも魅力の一つです。

そのため、普段の食生活を見直したい人や、運動をする人のおやつとしても利用されています。

ただし、ここで気を付けたいのが「健康によさそうだから、いくら食べても大丈夫」というわけではないことです。

焼き芋には炭水化物が多く含まれており、甘みが強い品種もあります。食べる量や食事全体のバランスを考えることが大切です。また、血糖値への影響は調理方法や食べる量などによって変わるため、焼き芋を一律に低GI食品と考えるのは適切ではありません。

それでも、素材そのものの味を楽しめる焼き芋は、甘いものを食べたいときの選択肢の一つになります。

さらに近年は、焼き芋を冷やして食べる「冷やし焼き芋」も人気です。

冷やした焼き芋は、温かいものとは違った食感を楽しめます。冷凍商品なども登場し、暑い季節でも食べやすくなりました。

焼き芋は秋冬の風物詩というイメージを残しながら、一年を通じて楽しめる食品へと進化しているのです。

4. 日本産のさつまいもが海外でも注目されている

焼き芋ブームは、日本国内だけで完結しているわけではありません。

日本産のさつまいもは、香港や台湾、タイ、シンガポールなどの海外市場でも人気を集めています。

海外にもさつまいもを食べる文化はありますが、日本産の特徴として評価されているのが、甘みの強さや、焼いたときのなめらかな食感です。

農畜産業振興機構が2022年に掲載した記事では、海外で日本産焼き芋が人気を集める理由として、味のよさに加え、店頭で焼くことによる香りや、手軽に食べ歩きできることなどが紹介されています。

焼き芋は、特別な食器や複雑な調理を必要とせず、手に持ってそのまま食べられます。こうした手軽さも、海外で受け入れられる理由の一つなのでしょう。

もちろん、海外のすべての国で日本産が圧倒的な人気を誇っているわけではありません。国や地域によって流通量や好まれる品種は異なります。

それでも、日本のさつまいもが海外で新たな市場を開拓していることは、興味深い変化だといえます。

戦争を経験した世代の中には、さつまいもに複雑な思いを抱く人もいる?

ここまでは、焼き芋の魅力や人気の理由について紹介してきました。

しかし、さつまいもの歴史を振り返ると、現在のような「甘くておいしいおやつ」というイメージだけでは語れない一面があります。

それが、戦中・戦後の食糧難です。

当時の日本では、食料が不足する中で、さつまいもが重要な食料源の一つになりました。米などの主食が十分に手に入らない状況では、さつまいもは人々の命をつなぐための大切な作物だったのです。

農林水産省の資料でも、さつまいもは飢饉や戦中・戦後の食料不足を乗り越えるうえで、多くの人々を支えてきた作物として紹介されています。

参考:農林水産省「じゃがいも・さつまいも」

一方で、食料が不足していた時代に、十分な量の食事を取れず、さつまいもを繰り返し食べざるを得なかった人もいました。

そうした経験を持つ人にとって、さつまいもは単なる懐かしい食べ物ではなく、苦しかった生活を思い出させる存在になっている可能性があります。

もちろん、戦争を経験した世代の全員がさつまいもを嫌っているわけではありません。好みや思い出は人それぞれです。

ただ、同じ食べ物でも、置かれた時代や経験によって印象が大きく変わることはあるでしょう。

現代のさつまいもは、昔と何が違うのか?

では、戦中・戦後に食べられていたさつまいもと、現在の焼き芋に使われているさつまいもには、どのような違いがあるのでしょうか。

大きな違いの一つが、品種と食べ方の多様化です。

現在は、甘みの強い品種、ホクホクした食感を楽しめる品種、しっとりした品種など、目的に合わせてさまざまな品種が利用されています。

また、焼き芋のおいしさは品種だけで決まるものでもありません。収穫後の貯蔵状態や加熱方法によっても、甘みや食感は変化します。

さつまいもには、加熱することででんぷんの一部が糖に変わる性質があります。じっくりと加熱することで甘みが引き出され、品種によっては蜜がにじみ出るような焼き芋になります。

つまり、現代の焼き芋のおいしさは、品種改良と栽培・貯蔵・調理の工夫が組み合わさって生まれているのです。

なお、戦時中に食べられていたさつまいもが、すべて甘みの乏しい品種だったわけではありません。当時も地域や品種、調理方法によって味わいは異なっていたはずです。

現代の品種と昔の品種を単純に比較することはできませんが、現在の焼き芋が、甘さや食感を楽しむ食品として発展してきたことは確かです。

日本のさつまいもは、どれくらい海外で人気なのか?

ここからは、海外での人気について、もう少し具体的に見てみましょう。

日本産のさつまいもは、国内で消費されるだけでなく、海外にも輸出されています。

農林水産省の資料に掲載された貿易統計によると、生のさつまいもの輸出額は2014年の約3億7,600万円から、2023年には約28億9,800万円へと増加しました。

およそ10年で7.7倍に拡大した計算です。輸出額は年によって変動しますが、海外市場が成長してきたことが分かります。

参考:農林水産省「国内の食料供給・かんしょに関する資料」

では、なぜ日本産のさつまいもが選ばれているのでしょうか。

1. 甘さや食感が評価されている

海外で日本産のさつまいもが注目される理由として、甘さや食感が挙げられます。

例えば、紅はるかやシルクスイートなどは、焼き芋にしたときの甘みやなめらかさが特徴です。

こうした特徴は、さつまいもを料理の材料としてだけでなく、そのまま食べるおやつとして楽しむ際にも魅力になります。

もちろん、海外にも甘みの強いさつまいもはありますし、日本産だけが優れているというわけではありません。それでも、日本で培われてきた品種改良や焼き芋の調理技術が、海外の消費者に新たな選択肢を提供していることは確かです。

2. 焼き芋を店頭で焼くスタイルも魅力

焼き芋は、味だけでなく、買うまでの体験も魅力的な食品です。

店頭で焼き上げることで甘い香りが広がり、焼きたての商品をその場で購入できます。

特に、手軽に食べられる食品が好まれる場所では、焼き芋の販売スタイルが相性のよい商品展開になることも考えられます。

海外で日本産の焼き芋を販売する店舗が増えることは、さつまいもの輸出だけでなく、日本の食文化を知ってもらう機会にもつながっています。

3. 日本の品種や品質管理が付加価値につながる

農産物を海外に輸出するには、おいしさだけでなく、安定した品質や流通体制も重要です。

さつまいもは、適切な温度や湿度で貯蔵することで品質を保ちやすくなり、品種や出荷時期に応じた管理が求められます。

こうした栽培・貯蔵・流通の工夫が、海外の市場で日本産のさつまいもを販売するうえでも重要な役割を果たしています。

一方で、輸出には輸送費や検疫、品質管理などの課題もあります。海外での人気が高まれば、それだけで国内の農家が必ず利益を得られるというわけではありません。

それでも、国内で培ってきた技術や品種の魅力を海外へ伝え、新しい販路を開拓する取り組みは、日本の農業にとって大切な可能性の一つです。

焼き芋は、昔ながらの食文化と新しい楽しみ方が共存する食品

ここまで、焼き芋ブームの背景や、さつまいもの歴史、海外での人気について紹介してきました。

焼き芋の魅力は、単に甘くておいしいというだけではありません。

昔ながらのホクホクした焼き芋を懐かしむ人がいる一方で、ねっとりした品種をスイーツ感覚で楽しむ人もいます。温かい焼き芋が好きな人もいれば、冷やして食べるのが好きな人もいるでしょう。

同じさつまいもでも、品種や焼き方、食べる人によって楽しみ方はさまざまです。

そして、日本で発展してきた焼き芋の文化は、今や海外にも広がっています。

身近な食べ物でありながら、農業技術の進歩や食生活の変化、海外とのつながりまで見えてくる。そう考えると、焼き芋はなかなか奥の深い食べ物ですね。

皆さんは、焼き芋を食べるなら、ねっとり派ですか? それとも、昔ながらのホクホク派ですか?

お気に入りの品種や、おすすめの食べ方があれば、ぜひコメントで教えてください!

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

それではまた別の記事でお会いしましょう

参考


🟡 おまけコーナー:「明日って何の日?」

11月6日

【お見合い記念日】

1947年(昭和22年)11月6日に、東京の多摩川河畔で日本初の「集団お見合い」が開催されたことが由来となっています。

由来となった出来事

  • 主催者: 当時発行されていた結婚紹介雑誌『希望』。
  • 背景: 当時は第二次世界大戦の直後で、戦争によって婚期を逃してしまった人が多く、男女の人口比の偏りや貧困なども重なり、結婚相手を見つけるのが非常に難しい時代でした。
  • 当日の様子: 20歳から50歳までの男女386人が参加しました。参加者は番号札を胸につけてプラカードを掲げて行進し、河川敷に集まるという現在から見ると驚くような光景でした。会場で気に入った相手を探し、終了後に最高3人までの身上書(プロフィール)を申し込むというシステムで、いわば現代の「婚活パーティー」の先駆けといえるイベントでした。

この出来事をきっかけに街中には結婚相談所が増えはじめ、戦後の新しい出会いの形としてお見合い文化が広がっていきました。

なお、これとは別に、3月10日も語呂合わせ(み(3)あい(1)=見合い)から「見合いの日」として日本記念日協会に認定されています。