そのビジネス用語、本当に意味を理解してる? カタカナ語の多用に感じる違和感

社会人の皆さんは、職場でビジネス用語を使っていますか?

ここでいうビジネス用語とは、特定の業界だけで使われる専門用語ではなく、さまざまな職場で耳にする言葉のことです。

例えば、こんな言葉を聞いたことはないでしょうか?

  • 「この案件、誰にアサインする?」
  • 「今月の目標達成にコミットしてください」
  • 「スケジュールにはバッファを持たせましょう」
  • 「その提案のエビデンスはありますか?」
  • 「一度、関係者でブレストしましょう」

どれもビジネスの現場で使われる言葉です。

こうした言葉を使いこなしていると、なんとなく仕事ができる人のように感じることもありますよね。

しかし、ふと疑問に思うことがあります。

その言葉、本当に意味を理解して使っているのでしょうか?

周りの人が使っているから、自分も何となく使っている。意味を詳しく説明してと言われると、少し自信がない……。

そんな経験がある人もいるかもしれません。

もちろん、ビジネス用語そのものが悪いわけではありません。短い言葉で複雑な概念を共有できるなど、便利な面もあります。

一方で、言葉の意味を正しく理解していなかったり、相手と認識がずれていたりすれば、仕事の効率を上げるどころか、かえって混乱を招いてしまいます。

そこで今回は、ビジネス用語が増えたと感じる背景や、よく使われる言葉の意味、そして「もっと普通の日本語で伝えた方がよいのでは?」という疑問について考えてみます。

ビジネス用語はなぜ増えたと感じるのか?

少し前と比べて、ビジネス用語を耳にする機会が増えたと感じる人もいるのではないでしょうか。

ただし、実際にどれくらい増えたのかを一概に判断するのは簡単ではありません。ここでは、言葉そのものの増加だけでなく、私たちが目にする機会が増えた背景について考えてみます。

1. ITやデジタル技術の発展

大きな理由の一つとして考えられるのが、ITやデジタル技術の発展です。

インターネットやスマートフォンが普及し、現在では多くの業界でデジタル技術が活用されています。

それに伴い、新しい技術や働き方を表す言葉も次々と登場しました。

例えば、次のような言葉があります。

  • DX:デジタル技術を活用して、業務や組織、ビジネスの仕組みを変革すること
  • リスキリング:仕事に必要な新しい知識やスキルを学び直すこと
  • データドリブン:データに基づいて判断や意思決定を行うこと
  • サブスクリプション:継続的な料金支払いによってサービスなどを利用する仕組み

新しい技術やサービスが生まれれば、それを説明するための言葉も必要になります。

その結果、以前は一部の専門家が使っていた言葉が、一般的な職場でも使われるようになったと考えられます。

2. 働き方や組織の変化

働き方や組織のあり方が変わってきたことも、背景の一つでしょう。

リモートワークやオンライン会議が普及し、異なる部署や企業の人と協力する機会も増えました。

また、従業員の働きやすさや組織との関係性など、以前よりも幅広いテーマが重視されるようになっています。

こうした場面で使われる言葉として、次のようなものがあります。

  • エンゲージメント:従業員と組織との結びつきや、仕事への関与の度合いなどを表す言葉
  • 心理的安全性:自分の意見や疑問を、過度な不安を感じずに発言できる状態
  • ウェルビーイング:心身や社会的な面も含めた、良好な状態
  • アサイン:人を特定の仕事や役割に割り当てること

新しい考え方を共有するために、こうした言葉が必要になる場面もあります。

ただし、言葉を知っていることと、その考え方を実際の職場で実現できていることは別問題です。

例えば「心理的安全性を高めよう」と掲げていても、部下が上司に疑問を伝えられない職場なら、言葉だけが先行しているのかもしれません。

3. 海外のビジネス用語が入ってくる

ビジネスの世界では、海外で生まれた考え方や手法が日本に入ってくることも珍しくありません。

特にIT業界やスタートアップ企業などでは、英語由来の言葉がそのままカタカナ語として使われることがあります。

例えば「コミット」「ブレスト」「アサイン」などです。

日本語に訳すよりも、元の言葉を使った方が便利な場面もあります。特定の業界や職場で意味が共有されていれば、短い言葉で意思疎通できるからです。

しかし、同じ言葉でも、人によって思い浮かべる意味が異なることがあります。

海外で使われている言葉だからといって、日本の職場でも同じ意味やニュアンスで使われているとは限りません。

言葉だけを取り入れ、意味の確認が置き去りになってしまうと、認識のずれが生まれる原因になります。

4. SNSや動画などで目にする機会が増えた

現在は、ビジネスに関する情報をインターネットで簡単に得られます。

ニュースサイトやSNS、動画配信サービスなどを通じて、経営者や専門家が使う言葉に触れる機会も増えました。

以前なら特定の業界や職種でしか耳にしなかった言葉が、一般の人にも知られるようになった可能性があります。

こうした情報の広がりによって、ビジネス用語が身近になった一方、言葉の意味を十分に理解する前に使い始めることもあるのではないでしょうか。

その言葉、本当に意味を理解してる? よく使われる5つのビジネス用語

それでは、職場でよく耳にする言葉を具体的に見てみましょう。

今回は「コミット」「アサイン」「ブレスト」「バッファ」「エビデンス」の5つを取り上げます。

用語基本的な意味使い方の例
コミット約束する、責任を持って関与する目標達成にコミットする
アサイン仕事や役割を割り当てる新しい案件に担当者をアサインする
ブレスト自由にアイデアを出し合うこと新商品の企画をブレストする
バッファ余裕、緩衝部分納期にバッファを設ける
エビデンス根拠、裏付けとなる証拠や資料提案を裏付けるエビデンスを示す

それぞれ、もう少し詳しく見ていきます。

1. コミット

「今月の売り上げ目標にコミットします!」

このような言い方を聞いたことはないでしょうか。

ビジネスの場面で使われる「コミット」は、目標や結果に責任を持って関与すること、あるいは約束することを意味します。

単に「頑張ります」と意気込みを示すだけでは、本来伝えたい意味が十分に伝わらない場合があります。

例えば、次の二つを比べてみましょう。

  • 「今月は売り上げアップにコミットします」
  • 「今月は売り上げを前月比10%増やすことを目標に、具体策を実行します」

後者の方が、何を目指しているのかが明確ですよね。

もちろん、コミットという言葉を使うこと自体は問題ありません。ただし、何に対して責任を持つのかが曖昧なままでは、相手と認識を共有できません。

大切なのは、格好のよい言葉を使うことではなく、何を約束するのかを明確にすることです。

2. アサイン

「このプロジェクトには、誰をアサインしようか」

この場合のアサインは、仕事や役割を人に割り当てることを意味します。

例えば、新しいプロジェクトの担当者を決めたり、特定の業務を社員に任せたりする場面で使われます。

ただし、単に声をかけることや、候補者として名前を挙げることと、正式に担当者として割り当てることは同じではありません。

「担当者をアサインする」と言われたときに、本人への依頼や合意が済んでいるのか、まだ候補として検討している段階なのかが曖昧なら、確認が必要です。

「担当者を決める」「この業務を○○さんに任せる」と伝えれば、状況がより明確になることもあります。

3. ブレスト

「新しい企画について、みんなでブレストしましょう!」

ブレストは「ブレインストーミング」の略で、複数の人が自由にアイデアを出し合う方法です。

一般的には、最初から意見を否定したり、実現可能性だけで判断したりせず、幅広いアイデアを出すことを重視します。

例えば、新商品の企画を考えるなら、最初から「そんなものは売れない」と否定するのではなく、まずは自由に案を出し、その後で実現性や費用などを検討します。

ところが、単に人を集めて話し合うことを、すべてブレストと呼んでしまうケースもあるかもしれません。

進捗を確認する会議と、自由にアイデアを出すブレストでは、目的が違います。

会議の名前を格好よくするよりも、何のために集まるのかを共有することが重要です。

4. バッファ

「スケジュールには、少しバッファを持たせておきましょう」

バッファは、余裕や緩衝部分を意味する言葉です。

仕事では、予定外のトラブルや作業の遅れなどに備えて、時間・予算・人員などに余裕を設ける場面で使われます。

例えば、資料の完成予定日が20日なら、確認や修正にかかる時間も考慮して、社内の提出期限を18日に設定する、といった考え方です。

これは単に余分な時間を確保しているのではなく、予想外の出来事が起きても、最終的な期限に間に合うようにするための工夫です。

ただし、「バッファを確保する」と言っても、どれくらいの余裕が必要なのかは状況によって異なります。

「念のため2日間の予備日を設けます」と具体的に伝えれば、相手も予定を把握しやすくなるでしょう。

5. エビデンス

「その説明を裏付けるエビデンスはありますか?」

エビデンスは、主張や判断などを裏付ける根拠・証拠を意味します。

例えば、売り上げの予測を説明するなら、その根拠となる販売実績や市場調査のデータなどがエビデンスになり得ます。

ただし、データが存在するだけで、必ずしも主張が正しいと証明できるわけではありません。データの内容や信頼性、主張との関係を確認する必要があります。

また、エビデンスは必ずしも契約書や正式な証明書のような、重い書類だけを指すわけではありません。状況に応じて、調査結果や記録、資料なども根拠になります。

ここで注意したいのは、「資料を見せてください」と「その主張を裏付ける根拠を示してください」では、求めているものが必ずしも同じではないという点です。

単に資料を集めるだけでなく、何を確かめたいのかを明確にすることが大切です。

ビジネス用語は、どれくらい誤解されているのか?

では、ビジネス用語をめぐる問題は、実際にどの程度起きているのでしょうか。

DuolingoとLinkedInが公表した、2023年のビジネス用語に関する調査では、日本の社会人の22.9%が、職場のビジネス用語の意味を知らなかったために、仕事で誤解やミスをした経験があると回答しています。

また、日本の社会人の70%が、ビジネス用語の誤解によって、余計な会議やメール、修正作業などの無駄な時間が発生することに同意しています。

出典:Duolingoによるビジネス用語の使用実態調査(PR TIMES)

この調査結果から分かるのは、ビジネス用語の意味が伝わらないことが、単なる言葉の問題にとどまらず、実際の業務にも影響する可能性があるということです。

ただし、この数字だけで、すべての職場で同じ問題が起きていると判断することはできません。調査の対象や質問の内容にも注意が必要です。

それでも、言葉の意味を共有できていないことで、仕事に支障が出る可能性は無視できないでしょう。

なぜ、意味が曖昧でも使ってしまうのか?

意味が分からないなら、調べたり、相手に聞いたりすればよい。

理屈としては、その通りです。

しかし、実際の職場では、分からない言葉をその場で聞き返せないこともあります。

なぜなのでしょうか。

1. 今さら聞くのが恥ずかしい

上司や同僚が当たり前のように使っている言葉を聞き返すのは、意外と勇気がいるものです。

「そんなことも知らないのか」と思われたくない。周りの話についていけない人だと思われたくない。

そう考えて、意味を十分に理解していなくても、分かったふりをしてしまうことがあるかもしれません。

特に、新入社員や異動したばかりの人にとっては、職場独自の言い回しを覚えることも負担になります。

分からない言葉を気軽に質問できる環境があれば、こうした問題は減らせるはずです。

2. 何となく意味が分かった気になってしまう

カタカナ語は、前後の会話から何となく意味を推測できることがあります。

例えば、「この案件にアサインする」と言われれば、誰かを仕事に関係させることなのだろう、と想像できるでしょう。

しかし、「担当者として正式に割り当てる」のか、「候補として名前を挙げる」のかによって、実際の行動は変わります。

大まかな意味が分かることと、仕事で正しく使えることは別なのです。

3. 日本語よりも仕事ができるように聞こえる?

これも、ビジネス用語が多用される理由の一つではないでしょうか。

「この仕事を担当してください」と言うよりも、「この案件にアサインします」と言った方が、なんとなく専門的に聞こえる。

「余裕を持たせてください」と言うよりも、「バッファを確保してください」と言った方が、仕事に慣れているように感じる。

もちろん、すべての人が格好をつけるために使っているわけではありません。職場で定着した表現だったり、専門的な概念を正確に伝えるためだったりする場合もあります。

それでも、言葉の意味よりも、言葉が与える印象を優先してしまえば、本来の目的から離れてしまいます。

言葉は仕事を進めるための道具であって、仕事ができるように見せるための飾りではないはずです。

そもそも、ビジネス用語は日本語に置き換えればよいのでは?

ここまで読んで、「そんなに誤解が起きるなら、普通の日本語で話せばよいのでは?」と思った人もいるでしょう。

私も、この考え方には一理あると思います。

例えば、次の二つを比べてみましょう。

  • 「この案件の担当者をアサインしてください」
  • 「この案件を担当する人を決めてください」

伝えている内容は、かなり近いですよね。

相手が「アサイン」という言葉を知らなくても、後者なら意味が伝わりやすいでしょう。

また、社外の顧客や、異なる部署の人と話す場合は、普段使っている言葉が相手にも通じるとは限りません。

そのため、誰にでも伝わる表現を選ぶことには、大きな意味があります。

実際、国立国語研究所では、分かりにくい外来語を分かりやすく伝えるための「外来語」言い換え提案を公表しています。これは、外来語の使用そのものを否定するのではなく、意味が伝わるように言い換えたり、説明を加えたりする工夫を提案したものです。

参考:国立国語研究所「外来語」言い換え提案

つまり、分かりやすい言葉で伝えることは、個人の好みだけではなく、社会的なコミュニケーションの課題としても考えられてきたのです。

それでも、カタカナ語が便利な場面はある

一方で、すべてのビジネス用語を日本語に置き換えればよい、とも言い切れません。

例えば「バッファ」という言葉は、単なる「余裕」だけでなく、不測の事態に備えるための余裕という意味で使われることがあります。

また、特定の専門分野で共通の意味が定着している用語は、毎回長い説明をするよりも、用語を使った方が効率的な場合があります。

「DX」や「サブスクリプション」なども、文脈によっては日本語だけで説明するより、元の言葉を使った方が簡潔に伝わることがあるでしょう。

重要なのは、カタカナ語を使うか、日本語に置き換えるかという二者択一ではありません。

相手が意味を理解できるかどうかを基準に、言葉を選ぶことです。

ビジネス用語は、どう使い分ければよいのか?

では、私たちは普段の仕事で、どのような点に気をつければよいのでしょうか。

次の3つを意識するだけでも、認識のずれを減らせるはずです。

1. 相手が知っている言葉かどうかを考える

同じ部署で長く働いている人同士なら、特定の用語を使っても問題なく通じるかもしれません。

しかし、取引先や新入社員、異なる職種の人と話す場合は、事情が違います。

例えば、社内で「この案件にアサインします」と言っても通じる相手に対して、社外では「この案件の担当者として、○○が対応します」と伝えた方が分かりやすい場合があります。

相手の知識や立場に合わせて言葉を選ぶことが大切です。

2. 曖昧な言葉は、具体的な内容を添える

ビジネス用語を使う場合でも、具体的な数字や行動を添えると、認識のずれを減らせます。

例えば、「目標達成にコミットします」だけでは、何をするのかが分かりません。

そこで、「今月の売り上げを前月比10%増やすことを目指し、週ごとに進捗を確認します」と説明すれば、目標と行動が明確になります。

同じように、「バッファを設けます」と言うだけでなく、「作業の遅れに備えて、提出期限の前に2日間の予備日を確保します」と伝えれば、相手も状況を理解しやすくなります。

言葉を短くすることよりも、必要な情報を正確に伝えることを優先しましょう。

3. 分からない言葉は、遠慮せず確認する

もし相手が使った言葉の意味が分からなかったら、そのままにせず確認することも大切です。

「すみません、ここでいうコミットとは、具体的にどのような目標を指していますか?」

「バッファは、何日くらい確保する想定でしょうか?」

このように聞けば、単に言葉の意味を尋ねるだけでなく、仕事の進め方についても認識を合わせられます。

また、上司やリーダーの立場にある人は、分からない言葉を質問しやすい雰囲気をつくることも重要です。

分からないことを聞けずに仕事を進め、後から大きな手戻りが発生するよりも、その場で確認できた方が、組織全体にとって効率的ではないでしょうか。

まとめ:格好よく話すことより、正しく伝えること

ビジネス用語は、仕事を効率よく進めたり、専門的な概念を共有したりするために役立つ言葉です。

そのため、カタカナ語を使うこと自体が悪いわけではありません。

しかし、意味を十分に理解していなかったり、相手と認識がずれていたりすれば、余計な確認や修正が発生する原因になります。

本来、言葉は自分の知識をアピールするためではなく、相手と意思疎通するために使うものです。

それならば、難しい言葉を知っていることよりも、相手に分かりやすく伝えられることの方が大切なのではないでしょうか。

私自身も、ビジネス用語を使うと、なんとなく仕事ができる人になったような気分になることがあります。

しかし、意味を正確に理解しているかと聞かれたら、自信を持ってすべて説明できるわけではありません。

だからこそ、普段何気なく使っている言葉を、一度見直してみるのもよいのかもしれませんね。

皆さんは、職場でビジネス用語をよく使いますか?

また、「それ、日本語でよくない?」と感じた経験はあるでしょうか。

格好よく聞こえる言葉と、相手にきちんと伝わる言葉。皆さんは、どちらを大切にしたいですか?

それではまた別の記事でお会いしましょう

参考


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11月3日

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