パワハラ問題がなくならない理由とは?してしまった時・された時の対処法

皆さんは、職場でパワハラに遭遇したことはありますか?

もしかすると、「自分はパワハラを受けたことがある」という人だけではなく、「もしかしたら自分も誰かにしてしまったかもしれない」と感じる人もいるかもしれません。

近年もパワハラに関するニュースを目にする機会は少なくありません。

「これだけパワハラについて報道されているのに、なぜなくならないのだろう?」

そんな疑問を持ったことはないでしょうか。

今回は、なぜパワハラが繰り返されるのか、そして「パワハラを受けた場合」と「自分がしてしまったかもしれない場合」に、どのように対応すればいいのかを考えてみたいと思います。


なぜパワハラ問題はなくならないのか?

パワハラがなくならない理由は、一つだけではありません。

組織の風土、管理職の考え方、職場の人間関係、仕事上のプレッシャーなど、さまざまな要因が重なって発生します。

さらに、パワハラについて社会的な認識が広がったことで、これまで「厳しい指導」「昔は普通だった」として見過ごされていた行為が、問題として認識されるようになった側面も考えられます。

では、具体的にはどのような原因があるのでしょうか。

1.「結果を出していればいい」という考え方

会社によっては、仕事の成果を出している人が高く評価されることがあります。

もちろん成果を出すことは大切です。

しかし、「あの人は仕事ができるから多少厳しくても仕方ない」という考え方が広がってしまうと、問題のある言動が見過ごされる可能性があります。

「結果を出している人だから許される」

そんな空気ができてしまえば、周囲も注意しにくくなります。

2.「これは指導だ」と思い込んでしまう

パワハラをしている人の中には、自分がパワハラをしているという自覚がないケースもあります。

「部下を成長させるため」

「仕事を覚えてもらうため」

「昔は自分も厳しく指導された」

「これくらい言わないと伝わらない」

このような考えから、必要以上に強い言葉を使ってしまうことがあります。

特に、自分自身が過去に厳しい指導を受け、それを乗り越えてきた経験がある人ほど、「自分もこうやって育ててもらった」という価値観を無意識に引き継いでしまうことがあります。

しかし、自分にとっては「普通の指導」でも、相手にとっては過度な精神的負担になっている可能性があります。

3.閉鎖的な職場では問題が表面化しにくい

上司と部下という関係は、どうしても力関係が生まれやすいものです。

さらに、職場全体が閉鎖的だったり、「上司には逆らえない」という雰囲気があったりすると、被害を受けても相談しにくくなります。

「相談したら自分が悪者になるかもしれない」

「会社に居づらくなるかもしれない」

「上司からさらに嫌がらせを受けるかもしれない」

そう考えて、我慢してしまう人もいるでしょう。

だからこそ、パワハラを個人同士の問題だけとして考えるのではなく、職場全体の問題として考えることが重要です。

厚生労働省も、事業主に対して相談体制の整備や、相談があった場合の事実確認、被害者・行為者への適切な対応、再発防止などを求めています。

4.「昔は普通だった」という価値観が残っている

「昔はもっと厳しかった」

「これくらいで弱音を吐くな」

「仕事なんだから我慢しろ」

こうした価値観が、現在の職場でも残っていることがあります。

もちろん、過去の職場環境と現在の職場環境では、求められるコミュニケーションのあり方も変化しています。

昔の常識をそのまま現在の職場に持ち込んでしまえば、知らないうちに相手を追い詰めてしまうこともあります。


そもそもパワハラとは?

ここで、「厳しい指導」と「パワハラ」の違いについて確認しておきましょう。

厚生労働省では、職場におけるパワーハラスメントを、以下の3つの要素をすべて満たすものとして整理しています。

  • 優越的な関係を背景とした言動である
  • 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動である
  • 労働者の就業環境が害されるものである

つまり、上司が部下を注意したからといって、それだけでパワハラになるわけではありません。

業務上必要な指導そのものまで否定されているわけではなく、必要性や相当性を超えた言動になっていないかが重要になります。

厚生労働省は、パワハラの典型的な例として、次の6類型を示しています。

  1. 身体的な攻撃
    暴行・傷害など
  2. 精神的な攻撃
    脅迫、侮辱、ひどい暴言など
  3. 人間関係からの切り離し
    仲間外し、無視、隔離など
  4. 過大な要求
    明らかに不要な仕事や、遂行が困難な仕事を無理にさせることなど
  5. 過小な要求
    合理性なく能力や経験とかけ離れた仕事をさせる、仕事を与えないなど
  6. 個の侵害
    私生活などに過度に立ち入ること

ただし、これらはあくまで典型例であり、すべてのケースを網羅しているわけではありません。


パワハラを受けた場合はどうすればいい?

もし「これってパワハラなのでは?」と感じた場合、まず大切なのは自分の安全と心身の健康を守ることです。

そのうえで、できる範囲で状況を記録しておくことも重要です。

1.何が起きたのか記録する

例えば、

  • いつ
  • どこで
  • 誰から
  • 何を言われたのか
  • 何をされたのか
  • その場に誰がいたのか

などを、できるだけ具体的に記録しておきます。

メールやチャットなど、後から確認できるものも保存しておくとよいでしょう。

録音についても、状況によっては事実関係を確認するための資料になる場合があります。

ただし、録音の扱いや証拠としての評価はケースによって異なるため、「録音さえあれば必ず解決できる」と考えないほうがよいでしょう。

2.一人で抱え込まない

「自分さえ我慢すればいい」

そう考えてしまう人もいるかもしれません。

しかし、我慢し続けることで心身に影響が出てしまう可能性があります。

社内の相談窓口、人事、上司、労働組合など、相談できる相手を探してみましょう。

社内に相談しにくい場合は、外部の相談窓口を利用する方法もあります。

厚生労働省の「総合労働相談コーナー」では、職場のトラブルについて労働者・事業主の双方から相談を受け付けています。

厚生労働省「総合労働相談コーナー」・ハラスメント対策

3.体調に変化があるなら医療機関への相談も検討する

パワハラなどによって、

「眠れない」

「食欲がない」

「会社に行こうとすると強い不安を感じる」

「動悸がする」

など、心身に変化が出ている場合は、無理をせず医療機関などに相談しましょう。

診療記録や診断書が、休職などの手続きや、その後の相談・申請において資料となる場合もあります。

何より大切なのは、仕事よりも自分自身の健康です。

場合によっては、休職や退職、転職などを含めて、自分を守るための選択肢を考えてもいいでしょう。


もし自分がパワハラをしているかもしれないと思ったら?

ここは、パワハラ問題を考えるうえで意外と重要な部分ではないでしょうか。

「自分はパワハラなんてしていない」

そう思っている人ほど、一度自分の言動を振り返ってみる価値があります。

なぜなら、最初から「よし、今日はパワハラをするぞ!」と思って誰かに接する人ばかりではないからです。

本人は「指導しているつもり」でも、結果として相手を追い詰めている可能性があります。

1.「指導のつもりだった」で終わらせない

もし誰かから、

「その言い方は怖いです」

「少し厳しすぎませんか?」

「パワハラではないですか?」

と言われたら、まず一度立ち止まってみましょう。

「自分はそんなつもりじゃなかった」

という気持ちはあるかもしれません。

しかし、そこで相手の受け止め方だけを否定してしまうと、問題の改善につながりません。

自分の言動に、業務上必要な範囲を超えた部分がなかったかを振り返ることが大切です。

2.人格ではなく「行動」を指摘する

例えば、

「お前は仕事ができない」

「そんなことも分からないのか」

「やる気がないなら辞めろ」

というように、相手の人格そのものを否定する言葉は避けるべきです。

注意する必要があるのであれば、

「この書類の数字が間違っています」

「提出期限を過ぎています」

「次回からはこの手順でお願いします」

というように、何が問題だったのか、どう改善してほしいのかを具体的に伝えるほうが、建設的な指導になります。

3.感情的になったら、いったん距離を置く

仕事でミスが続いたり、納期に追われたりすると、上司側も余裕を失うことがあります。

「なんでこんなこともできないんだ!」

と言いたくなる瞬間もあるかもしれません。

そんなときこそ、一度冷静になることが大切です。

その場で強い言葉をぶつけるのではなく、少し時間を置いてから話す。

それだけでも、言葉の選び方は変わるかもしれません。

4.第三者に相談してみる

「自分の指導方法は大丈夫だろうか?」

と不安になった場合は、人事や上司、社内の相談窓口などに相談してみるのも一つの方法です。

自分一人で「これは普通の指導だ」と判断するより、第三者から客観的な意見をもらうことで気づけることがあります。

アンガーマネジメントやマネジメントに関する研修・書籍などを利用して、自分のコミュニケーションを見直してみるのもよいでしょう。


「自分は大丈夫」と思っている時こそ、一度振り返ってみる

パワハラ問題について考えていると、

「パワハラを受けている人は大変だ」

という被害者側の視点に目が向きやすいと思います。

もちろん、それは非常に重要なことです。

しかし、もう一つ考えておきたいのが、**「自分自身が誰かを傷つける側になっていないか」**ということです。

パワハラをする人のすべてが、最初から相手を苦しめようとしているとは限りません。

「仕事を覚えてほしい」

「成長してほしい」

「もっと責任感を持ってほしい」

そんな気持ちから、指導が徐々に強くなってしまうこともあるでしょう。

だからこそ、

「自分は絶対に大丈夫」

と決めつけるのではなく、

「もしかしたら、自分にもそういうところがあるかもしれない」

と、ときどき自分の言動を振り返ることが大切なのではないでしょうか。

筆者自身も、過去を振り返ると「もしかしたら自分も似たようなことをしていたのではないか」と思う部分があります。

当時は、それが相手にどのような影響を与えているのかまで考えられていなかったのかもしれません。

だからこそ、この記事を書きながら自分自身も改めて考えさせられました。


パワハラをなくすために必要なのは「誰かを責めること」だけではない

パワハラが起きたとき、当然ながら行為について適切に対応することは必要です。

しかし、それだけでは同じ問題が繰り返されてしまう可能性があります。

なぜそのような言動が起きたのか。

職場にどんな問題があったのか。

相談できる環境はあったのか。

上司だけに過剰な負担がかかっていなかったか。

「昔からこうだった」という風土が残っていなかったか。

こうした部分まで考えなければ、根本的な改善は難しいでしょう。

厚生労働省も、企業に対して相談体制の整備だけでなく、問題が発生した場合の事実確認、適切な対応、再発防止などを求めています。

パワハラは、被害を受けた人だけの問題ではありません。

上司、部下、同僚、そして会社全体が考えるべき問題なのだと思います。


まとめ

今回は、パワハラ問題がなくならない理由と、パワハラを受けた場合、そして自分がしてしまったかもしれない場合の対応について考えてみました。

パワハラについて知識を持つことはもちろん大切です。

しかし、それだけでは十分ではありません。

「自分が被害者になっていないか」

だけではなく、

「自分が誰かを傷つけていないか」

という視点も持っておきたいところです。

もし、「自分も少し厳しすぎるかもしれない」と感じることがあるなら、これまでの自分の言動を一度振り返ってみてください。

アンガーマネジメントやコミュニケーション、マネジメントについて学んでみるのも一つの方法です。

そして、もし今まさにパワハラを受けているのであれば、一人で抱え込まないでください。

会社の相談窓口や外部の相談窓口など、頼れる場所はあります。

仕事は大切です。

しかし、自分自身を壊してまで続ける必要はありません。

「誰かを傷つける職場」ではなく、「お互いに安心して働ける職場」が少しずつ増えていけばいい。

筆者はそんな職場環境になることを願っています。

それではまた別の記事でお会いしましょう


🟡 おまけコーナー:「明日って何の日?」

10月11日

【安全・安心なまちづくりの日】

「安全・安心なまちづくりの日」とは、犯罪に強い社会の実現に向けて、地域社会の防犯意識を高め、安全・安心なまちづくりを推進する機運を全国に広げることを目的としています。

2005年(平成17年)に政府の犯罪対策閣僚会議によって制定されました。

主な特徴と取り組み

  • 全国地域安全運動の初日
    10月11日は、警察や防犯協会などが中心となって実施する「全国地域安全運動」(10月11日〜20日の10日間)のスタートの日にあたります。
  • 地域が連携した防犯活動
    この日を中心に、警察、地方自治体、学校、防犯ボランティア団体などが連携を強化します。特殊詐欺の被害防止や子どもの見守り、地域のパトロールといった様々な啓発活動や防犯活動が全国展開されます。
  • 関係功労者の表彰
    安全・安心なまちづくりの推進に顕著な功績や功労があった団体・個人を称えるため、政府による「安全安心なまちづくり関係功労者表彰」の表彰式がこの日の前後に首相官邸などで実施されます。

近年は、高齢者を狙う深刻な特殊詐欺の被害防止や、SNSなどを通じた犯罪に加担させないための対策などが全国的な重点テーマとして掲げられています。