なぜカレーパンはあるのにシチューパンはない?似ているのに全然違う「パンとの相性」の秘密

カレーといえば、日本人にとってかなり身近な料理ですよね。

カレーライスはもちろん、カレーうどん、カレーコロッケ、カレーまん、カレー味のスナックなど、カレーを使った食べ物は数え切れないほどあります。

その中でも代表的なのが「カレーパン」です。

パンの中にカレーが入っていて、外側はサクサク。今ではすっかり定番の惣菜パンになっています。

ところが、ここでふと疑問が浮かびませんか?

「カレーと似たような具材を使うシチューにも、シチューパンがあってもよくない?」

鶏肉、豚肉、牛肉、じゃがいも、にんじん、玉ねぎ……。

具材だけを見ると、カレーとシチューには共通するものがたくさんあります。

それなのに、カレーパンはどこにでもあるのに、「シチューパン」となると急に見かけなくなります。

もちろん、シチューを使ったパンが存在しないわけではありません。

では、なぜカレーパンのような「定番商品」になっていないのでしょうか?

今回は、そんな素朴な疑問から、シチューとパンの意外な関係、さらには日本のクリームシチューの歴史まで調べてみました。


カレーパンはあるのに、なぜシチューパンは少ない?

まず結論から言うと、

「シチューをパンに入れることが不可能だから」ではありません。

実際、シチューを使ったパンは存在します。

ただし、カレーパンのように大量生産・常温販売される「定番の惣菜パン」にするには、いくつかの難しさがあります。

大きく分けると、

  • 中身の水分や粘度
  • 包む・焼く・揚げるときの扱いやすさ
  • 保存や衛生管理
  • パンとの味のバランス
  • 「シチューはどうやって食べるものか」という食文化

などが関係していると考えられます。

では、一つずつ見ていきましょう。


1.シチューは「包む」よりも扱いにくい

カレーパンの中身は、一般的にかなり濃度のあるカレーです。

具材を細かくしたり、ルウを煮詰めたりすることで、パン生地の中に入れても流れ出にくい状態にできます。

一方、一般的なクリームシチューは、具材がゴロゴロしているうえ、ソースもカレーより流動性があります。

これをパン生地で包もうとすると、成形時に扱いにくくなります。

さらに、焼成中に中身が動いたり、パン生地との境目から漏れたりする可能性もあります。

特に「揚げる」タイプのカレーパンにしようとすると、難易度はさらに上がります。

水分を多く含んだ具材やソースを包んで油で揚げる場合、内部で発生する蒸気などによって生地が破れ、中身が飛び出すリスクも考えなければなりません。

つまり、

「シチューをパンに入れること」自体はできても、「カレーパンと同じ方法で大量に作ること」は簡単ではない

というわけです。


2.シチューは「水分との戦い」になりやすい

パンにとって、水分は非常に重要な存在です。

パン生地に適度な水分があることはもちろん必要ですが、完成したパンの中に水分の多い具材を入れると、その水分が生地に移ってしまいます。

すると時間が経つにつれて、

「せっかく焼いたパンがベチャッとしてしまう」

という問題が起こりやすくなります。

これはシチューに限った話ではありません。

惣菜パンでは、「中身のおいしさ」と「パン生地の食感」をどう両立させるかが重要です。

焼き立てならおいしくても、数時間後にはパンが湿ってしまう。

それでは商品としては扱いにくいですよね。

だからこそ、シチューを使ったパンでは、

パンの中に完全に包むのではなく、パンを器にして上からシチューを入れる

という方法がよく合います。

これなら水分がパン全体に染み込むことをある程度抑えながら、焼き上げることができます。


3.「シチュー味」はパンの中で少しぼやけやすい?

ここはカレーとの大きな違いかもしれません。

カレーには、スパイスによる強い香りや辛味、塩味があります。

そのため、パンの甘みや小麦の風味と組み合わせても、味の輪郭がはっきりしています。

一方、クリームシチューは、まろやかで優しい味わいが魅力です。

これはシチュー単体では大きな長所なのですが、パンの中に入れると、

「パン+シチュー」なのか「シチュー風味のパン」なのか、少し境界が曖昧になりやすい

とも考えられます。

もちろん、チーズやベーコン、ブラックペッパーなどを加えれば味にアクセントを付けることはできます。

実際、パン屋さんなどではこうした工夫をした商品が見られます。

ただ、「カレーパン」のように誰もが一目で味を想像できる強い定番商品にするには、少し工夫が必要なのかもしれません。


4.そもそも「シチューとパン」は相性が悪いわけではない

ここが今回、一番面白いところです。

シチューとパンは、決して相性が悪いわけではありません。

むしろ、

めちゃくちゃ相性がいい。

では、なぜ「パンの中に入れる」という発想がカレーほど広まらなかったのでしょうか?

その理由の一つとして考えられるのが、

「シチューはパンと一緒に食べる料理」という食べ方が定着しているから

です。

例えば、焼いたフランスパンをシチューにつけて食べる。

パンにシチューを染み込ませて食べる。

外側のカリッとした部分と、シチューを吸ったジュワッとした部分を楽しむ。

この食べ方なら、自分で「どれくらいシチューを染み込ませるか」を調整できます。

最初からパンの中にシチューが閉じ込められている必要がないんですよね。


カレーとシチューでは「パンとの付き合い方」が違う?

ここでカレーと比較してみると、さらに面白くなります。

カレーは日本で、

「ご飯にかけて食べる料理」

として広く定着しました。

そして、そのカレーを「ご飯ではなくパンと組み合わせる」という発想から生まれたのがカレーパンです。

つまり、

カレー → カレーライス → カレーパン

という別の食べ方への発展が起きたわけです。

一方、シチューはパンと組み合わせる場合、

シチュー+パン

という関係のままでも十分に成立します。

パンをシチューにつけてもいい。

パンをシチューに浸してもいい。

パンを器にしてもいい。

つまり、シチューの場合は、

「わざわざパンの中に閉じ込めなくても、パンと一緒に食べればいい」

という状態が最初から完成しているとも言えます。


実は「シチューパン」は存在する

ここまで読むと、

「じゃあシチューパンって本当に存在しないの?」

と思うかもしれません。

しかし、もちろん存在します。

パン屋さんなどでは、

  • シチューグラタンパン
  • ビーフシチューパン
  • クリームシチューパン
  • シチューデニッシュ
  • チーズ入りシチューパン

など、シチューを使ったパンが販売されることがあります。

ただし、カレーパンのように全国どこでも見かける「定番商品」という位置付けとは少し違います。

その理由として考えられるのが、

シチューを「パンで包む」のではなく、「パンを器にする」ほうが相性がいい

ということです。

例えば、パンを器のようにして、その中にシチューを入れ、チーズを乗せて焼く。

これはかなり理にかなっています。

パンそのものがシチューの受け皿になるからです。

しかもチーズを乗せれば、グラタンのような感覚で楽しめます。

こうなると、

「シチューパンがない」

というより、

「シチューはカレーパンとは違う方向に進化した」

と考えたほうが面白いのかもしれません。


では、シチューそのものはどこから来た?

ここからは、もう一つ気になる疑問です。

「そもそもシチューって日本の料理なの?」

実は、ここも非常に面白いところです。

「シチュー」という料理のルーツについては諸説ありますが、ハウス食品の資料では、シチューの発祥は16~17世紀のフランスとされています。

ただし、当時から現代の日本で食べられている「クリームシチュー」が存在したわけではありません。

世界各地には昔から肉や魚、野菜などを鍋で煮込む料理があり、「シチュー」「スープ」「煮込み料理」の境界も現在ほど明確ではありません。

つまり、

「シチューという料理がある日突然誕生した」

というより、各地の煮込み料理が長い時間をかけて発展してきたと考えるほうが自然でしょう。


日本にシチューがやってきたのは明治時代

日本では、明治時代の中ごろからシチューが洋食店のメニューとして登場し始めたとされています。

当時のシチューは、現在の家庭料理のような存在ではありません。

むしろ洋食店で提供される、ちょっと高級な料理でした。

その後、料理書や雑誌などにもシチューが登場するようになり、少しずつ日本人にも知られる料理になっていきます。

そして、日本のシチューの歴史を語るうえで欠かせないのが、

学校給食

です。


日本の「白いシチュー」が広まったきっかけ

現在、日本で「シチュー」と聞いて思い浮かべるものといえば、

白いクリームシチュー

ではないでしょうか?

鶏肉やじゃがいも、にんじん、玉ねぎなどが入った、白くてとろみのあるシチュー。

実は、この「日本でおなじみの白いシチュー」が全国的に広まるうえで、戦後の学校給食が大きな役割を果たしたとされています。

当時は現在のような便利なシチュールウが一般家庭に普及していたわけではありません。

学校給食などでは、小麦粉などでとろみを付けた「白いシチュー」が作られていました。

つまり、

「子どものころ給食で食べた、あの白いシチュー」

という記憶が、日本人のシチューのイメージ形成に大きく影響したとも考えられます。


そして1966年、「シチューミクス」が登場

そんなシチューを家庭料理として一気に身近なものにした存在があります。

それがハウス食品の、

「シチューミクス」

です。

1966年、ハウス食品は「クリームシチューミクス」と「ビーフシチューミクス」を発売しました。

当時、まだシチューは家庭料理として十分に定着していませんでした。

そこでハウス食品は、学校給食などで親しまれていた「白いシチュー」を家庭でも簡単に作れるようにしようと開発。

さらに「ごはんのおかずになるシチュー」を目指していたそうです。

これって、かなり興味深いですよね。

シチューというと「パンと一緒に食べる西洋料理」というイメージがありますが、日本で家庭料理として定着していく過程では、

「ご飯のおかずとして食べられるシチュー」

という方向にも進化していったわけです。

現在の日本のクリームシチューが、海外の料理をそのまま輸入したものではなく、日本の食文化の中で独自に発展してきた料理だということが分かります。


「クリームシチュー=完全な日本発祥」と言い切っていい?

ここは少し注意したいところです。

日本のクリームシチューには、日本独自の発展が強く見られます。

一方で、海外にもホワイトソースや牛乳などを使った煮込み料理は存在します。

そのため、

「世界にクリーム系の煮込み料理が存在しない=クリームシチューが完全に日本だけの料理」

と単純に言い切るのは少し違います。

むしろ、

「海外の煮込み料理やホワイトソース料理などの影響を受けながら、日本の学校給食や食品メーカーによって、現在の日本式クリームシチューへと発展した」

と考えるほうが正確でしょう。

実際、ハウス食品も「シチューミクス」の開発にあたってアイルランドの「アイリッシュシチュー」を参考にしたと説明しています。

料理の歴史って、こうやって国から国へ影響しながら変化していくところが面白いですよね。


カレーとシチュー、似ているようで実は違う

ここまで調べてみると、最初の疑問に戻ってきます。

「なぜカレーパンはあるのにシチューパンは少ないのか?」

もちろん、水分量や調理・製造上の難しさなど、商品化するうえでの技術的な問題はあります。

しかし、それだけではないように思えます。

カレーは、

ご飯にかける
↓
パンに入れる
↓
カレーパンとして独立する

という進化を遂げました。

一方のシチューは、

パンと一緒に食べる
↓
パンにつける
↓
パンを器にする
↓
シチューグラタンなどに進化する

という別の方向へ進んだ。

つまり、

カレーとシチューは「パンとの付き合い方」が違う

のではないでしょうか。


シチューは「パンを支配する」のではなく「パンと仲良くする」

個人的には、ここが今回の話で一番面白いポイントだと思います。

カレーパンは、カレーをパンの中に閉じ込めることで、一つの完成した料理になっています。

パンを食べれば、そこには必ずカレーがある。

まさに、

「カレーがパンを支配した」

ような食べ物です。

一方、シチューは少し違います。

パンをシチューにつけてもいい。

パンをシチューに浸してもいい。

シチューをパンの器に入れてもいい。

チーズを乗せて焼いてもいい。

つまり、

「シチューとパンが、それぞれの良さを残したまま一緒に楽しむ」

という関係になっています。

そう考えると、シチューパンがカレーパンほど普及しなかったのは、単純に「商品化が難しかったから」だけではないのかもしれません。

そもそもシチューは、

パンの中に閉じ込める必要がなかった

のです。


それでも「シチューパン」がもっと増えてもいいと思う

とはいえ、ここまで考えても一つだけ言いたい。

シチューパン、もっとあってもよくない?

(笑)

クリームシチューをパンに入れて、チーズを乗せて焼いたら絶対においしい。

ビーフシチューをデニッシュ生地に入れてもおいしそう。

ベーコンやきのこを加えたクリームシチューをパンに包んでもおいしそうです。

むしろ冬限定商品として、

「熱々シチューパン」

なんて販売したら、かなり魅力的ではないでしょうか。

ただし、商品として成立させるには、やはり「中身が漏れない」「パンがベチャつかない」「安全に保存できる」「時間が経ってもおいしい」といった条件をクリアする必要があります。

だからこそ、現在のシチュー系パンでは「包む」よりも「器にする」「焼き込む」といった方法が選ばれやすいのでしょう。


まとめ:シチューパンが少ないのは「シチューとパンの相性が悪いから」ではない

今回の疑問、

「カレーパンはあるのに、なぜシチューパンはないの?」

について調べてみると、単純な答えではありませんでした。

シチューをパンに入れること自体は可能です。

実際にシチューを使ったパンも存在します。

しかし、カレーパンのような定番商品として広く普及させるには、

  • シチューの水分や粘度
  • パン生地への水分移行
  • 成形や加熱の難しさ
  • 保存性や衛生管理
  • パンと合わせたときの味のバランス

など、いくつもの課題があります。

そして何より面白いのが、

「シチューはパンと一緒に食べる」という食文化がすでに完成している

ということ。

カレーはパンの中に入ることで「カレーパン」という新しい料理になりました。

一方、シチューはパンにつけたり、浸したり、パンを器にしたりすることで、別の形でパンとの関係を築いてきました。

そう考えると、

カレーパンがない世界は想像しにくいのに、シチューパンがなくてもあまり困らない。

なんとも不思議ですよね。

しかも、日本のクリームシチュー自体も、海外の煮込み料理をルーツにしながら、学校給食や食品メーカーによって日本の家庭料理として独自に発展してきました。

カレーもシチューも、海外からやってきた料理が日本の食文化の中で独自の進化を遂げた料理です。

そう考えると、普段何気なく食べているカレーやシチューも、ちょっと違って見えてきませんか?

そして最後に、もう一つ疑問が残ります。

「じゃあ、なぜシチューはカレーほど一年中食べたくならないんだろう?」

寒い季節になると急に食べたくなるシチュー。

カレーは真夏でも食べるのに、シチューはなぜか冬のイメージが強い。

これも調べてみると、なかなか面白い理由がありそうです。

皆さんはどう思いますか?

「シチューパン、もっとあってもいい!」

と思いますか?

それとも、

「いやいや、シチューはパンにつけて食べるからおいしいんだよ!」

と思いますか?

ぜひ皆さんの「シチューとパンの食べ方」も聞いてみたいところです。

それではまた別の記事でお会いしましょう


🟡 おまけコーナー:「明日って何の日?」

10月7日

【ミステリー記念日】

ミステリー小説(推理小説)の先駆者であるアメリカの小説家、エドガー・アラン・ポーが1849年10月7日に亡くなったことに由来しています。

由来と豆知識

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  • 江戸川乱歩との関係:日本の有名な推理作家である「江戸川乱歩(えどがわらんぽ)」のペンネームは、この「エドガー・アラン・ポー」の名前を文字ってつけられたことでも知られています。
  • 日本独自の記念日:ポーの命日にちなんでいますが、本国アメリカではなく、日本で独自に作られた記念日です(創設年や創設者は詳しく分かっていません)。

10月7日の「ミステリー記念日」には、図書館や書店でミステリー小説の特設コーナーが作られたり、SNSでおすすめのミステリー作品を紹介し合ったりする文化があります。秋の夜長に謎解きを楽しんでみるのはいかがでしょうか。