新型コロナウイルスの流行をきっかけに、一気に広がった在宅勤務。
以前は「自宅で仕事をする」という働き方は一部の職種に限られていました。しかし現在では、パソコンとインターネット環境さえあれば、自宅やコワーキングスペースなど、オフィス以外の場所で働くことも珍しくなくなりました。
一方で、在宅勤務が広がるにつれて、こんな疑問も生まれています。
「自宅で仕事をしたら、社員はサボってしまうのではないか?」
たしかに、自宅にはテレビ、スマートフォン、漫画、ゲーム、ベッドなど、仕事以外の誘惑がたくさんあります。
ちなみに筆者自身は、在宅勤務をした場合、正直なところ誘惑に負けてしまう自信があります。
「少しだけスマホを見よう」
「ちょっとだけ動画を見よう」
「5分だけ横になろう」
この「少しだけ」が、気づけば30分、1時間になってしまう可能性は十分にあります。
しかし、在宅勤務をしている人全員が怠けているわけではありません。
むしろ、オフィスよりも自宅の方が集中できる人もいます。通勤時間がなくなったことで体力に余裕が生まれ、以前よりも長時間働いてしまう人もいるでしょう。
つまり、在宅勤務の生産性は、
「自宅で働くか、会社で働くか」だけでは決まらない
のかもしれません。
今回は、在宅勤務で人は本当に怠けてしまうのか、出社と在宅勤務ではどちらが生産性が高いのか、そして日本の在宅勤務は世界と比べてどう評価されているのかについて考えてみます。
在宅勤務では本当に怠ける人が増えるのか?
結論から言えば、在宅勤務だから必ず怠けるわけではありません。
在宅勤務で生産性が上がる人もいれば、逆に仕事に集中できなくなる人もいます。
この差を生む大きな要因は、
- 個人の性格
- 仕事内容
- 自宅の環境
- 会社の管理方法
- 仕事とプライベートの切り替え方
などです。
たとえば、1人で集中して作業することが得意な人であれば、オフィスよりも在宅勤務の方が快適かもしれません。
一方で、人から見られている方が集中できる人や、周囲の人と会話しながら仕事を進める方が得意な人にとっては、在宅勤務は難しい働き方になる可能性があります。
つまり、
在宅勤務が向いている人と、向いていない人がいる
ということです。
在宅勤務で怠けてしまいやすい理由
まずは、在宅勤務で仕事に集中できなくなる理由について考えてみましょう。
1. 仕事とプライベートの境界線が曖昧になる
会社に出勤する場合、家を出た時点で「これから仕事に行く」という気持ちになります。
そして会社を出れば、「仕事が終わった」という感覚を持ちやすくなります。
しかし在宅勤務では、仕事をする場所と生活する場所が同じです。
朝起きて、数歩歩けば仕事を始められる。
仕事が終わっても、すぐ隣にベッドがある。
この便利さは在宅勤務の大きなメリットですが、同時に仕事とプライベートの切り替えを難しくする原因にもなります。
「仕事をしているはずなのに、家にいる」という感覚が、集中力に影響することもあるでしょう。
2. 自宅には誘惑が多い
自宅には仕事以外のものがたくさんあります。
- スマートフォン
- テレビ
- 動画配信サービス
- ゲーム
- 漫画
- ベッド
- お菓子
- 趣味の道具
これらは、オフィスには基本的に存在しません。
もちろん会社でもスマートフォンを見ることはできますが、周囲に同僚や上司がいるため、ある程度の抑止力が働きます。
しかし自宅では、誰にも見られていません。
「ちょっとスマホを見るくらいなら問題ない」
そう思ってスマートフォンを手に取った結果、気づけばSNSや動画を長時間見ていた。
このような経験をしたことがある人も少なくないのではないでしょうか。
筆者の場合も、在宅勤務をしたら、
「ちょっと休憩」→「スマホを見る」→「動画を見る」→「気づいたらかなり時間が経っている」
という流れになりそうです。
これは在宅勤務の大きな誘惑ですね。
3. 周囲の目がない
会社では、同僚や上司が近くにいます。
そのため、完全に仕事をしていない状態を長時間続けるのは難しいでしょう。
しかし在宅勤務では、上司や同僚から直接見られることはありません。
この環境を「自由で働きやすい」と感じる人もいれば、「自分を律するのが難しい」と感じる人もいます。
ここで重要なのは、監視がなければ誰もが怠けるわけではないということです。
むしろ、誰にも見られていないからこそ、自分の責任感で仕事を進められる人もいます。
結局のところ、在宅勤務では「自分で自分を管理する能力」が非常に重要になると言えるでしょう。
逆に、在宅勤務で生産性が上がる人もいる
ここまで在宅勤務のデメリットを紹介しましたが、もちろんメリットもあります。
場合によっては、在宅勤務の方が生産性が高くなる人もいます。
1. 集中しやすい
オフィスでは、さまざまなことが起こります。
- 同僚から話しかけられる
- 電話が鳴る
- 突然の会議が入る
- 周囲の会話が聞こえる
- 急な仕事を頼まれる
もちろん、これらが必要な場合もあります。
しかし、1人で集中して作業したいときには、こうした中断が負担になることもあります。
在宅勤務であれば、周囲から話しかけられる機会が減り、集中して作業できる可能性があります。
資料作成やプログラミング、文章作成、デザインなど、個人で集中して進める仕事であれば、在宅勤務のメリットは大きいかもしれません。
2. 通勤時間がなくなる
在宅勤務の大きなメリットのひとつが、通勤時間の削減です。
毎日片道1時間かけて通勤している人の場合、往復で2時間かかります。
1か月で考えると、かなりの時間になります。
その時間を睡眠や休養、勉強、家族との時間に使うことができます。
また、満員電車によるストレスや体力の消耗がなくなることも大きいでしょう。
通勤によって疲れ切った状態で仕事を始めるのではなく、比較的余裕のある状態で仕事を始められる。
これは在宅勤務の大きなメリットです。
3. 人によっては「働きすぎる」
在宅勤務では「サボる」人が注目されがちですが、逆に働きすぎてしまう人もいます。
会社であれば、定時になれば帰宅するという区切りがあります。
しかし在宅勤務では、仕事を終えてもパソコンが目の前にあります。
「もう少しだけやっておこう」
「このメールだけ返信しよう」
そう思っているうちに、仕事が長時間化してしまうことがあります。
そのため、在宅勤務では、
「サボりすぎる問題」だけでなく「働きすぎる問題」も存在する
のです。
在宅勤務で怠けないためには「精神力」より「仕組み」が重要
在宅勤務で集中できない人は、「自分は意思が弱い」と考えてしまうかもしれません。
しかし、毎日強い精神力だけで誘惑に勝ち続けるのは簡単ではありません。
そこで重要になるのが、誘惑に負けにくい環境を作ることです。
仕事専用のスペースを作る
可能であれば、仕事専用の部屋やデスクを用意します。
難しい場合でも、仕事をするときだけ使う場所を決めるだけで、仕事とプライベートの切り替えがしやすくなります。
スマートフォンを手元に置かない
スマートフォンは非常に強力な誘惑です。
仕事中は別の部屋に置く、通知を切る、アプリの利用時間を制限するなどの対策も有効でしょう。
「見ないようにする」よりも、
「そもそも手元に置かない」
方が簡単な場合もあります。
ポモドーロ・テクニックを使う
25分作業して5分休憩する「ポモドーロ・テクニック」のように、作業時間を区切る方法もあります。
「今日は8時間集中しなければならない」と考えると大変ですが、
「まず25分だけ集中する」
と考えると、心理的な負担は小さくなります。
着替える
在宅勤務だからといって、パジャマや部屋着のまま仕事を始めると、仕事モードに切り替わりにくい人もいます。
そこで、仕事用の服に着替えるという方法があります。
外出する必要がなくても、着替えることで「これから仕事を始める」というスイッチを入れられる可能性があります。
出社と在宅勤務では、どちらの生産性が高いのか?
ここで気になるのが、
「結局、会社に出社する方が生産性は高いのか?」
という問題です。
これについては、すべての会社に当てはまる答えはありません。
なぜなら、仕事の内容によって適した働き方が異なるからです。
出社の方が生産性を高めやすい仕事
たとえば、
- チームで頻繁に相談する仕事
- 対面でのコミュニケーションが重要な仕事
- 新しいアイデアを生み出す仕事
- その場で迅速な意思決定が必要な仕事
- 新人教育やOJTが重要な仕事
などは、出社のメリットが大きい場合があります。
同じ空間にいることで、ちょっとした相談がすぐにできます。
オンライン会議を設定するほどではない簡単な確認も、対面なら数分で済むことがあります。
また、雑談の中から新しいアイデアが生まれることもあります。
このような「偶発的なコミュニケーション」は、オンライン環境では生まれにくいという指摘もあります。
在宅勤務の方が生産性を高めやすい仕事
一方で、
- 文章作成
- データ分析
- プログラミング
- 資料作成
- デザイン
- 事務作業
など、1人で集中して作業する時間が重要な仕事では、在宅勤務のメリットが大きい場合があります。
周囲から話しかけられることがなく、通勤時間もない。
そのため、集中できる人にとっては非常に効率的な働き方になります。
つまり、
「出社か在宅か」ではなく、「どの仕事をどこで行うか」が重要
なのかもしれません。
日本企業では「出社回帰」の動きも広がっている
新型コロナウイルスの流行中、多くの企業が在宅勤務を導入しました。
しかし、その後は「原則出社」へ戻す企業も増えています。
その理由としては、
- 社員同士のコミュニケーション不足
- 新人教育の難しさ
- 意思決定のスピード低下
- チームワークへの影響
- 会社への帰属意識の低下
などが挙げられます。
ただし、ここで注意したいのは、
「出社に戻した企業が増えた=在宅勤務は失敗だった」
と単純に考えることはできないという点です。
企業によって仕事内容も違います。
同じ在宅勤務でも、文章作成が中心の会社と、頻繁な対面コミュニケーションが必要な会社では、結果が異なって当然です。
日本の在宅勤務の生産性は、世界と比べて高いのか?
ここは非常に興味深いところです。
国際調査では、日本の労働者は海外の労働者と比べて、在宅勤務の生産性を低く評価する傾向があるとされています。
たとえば、在宅勤務によって生産性が上がったと感じる人の割合が、アメリカなどと比べて日本では低いという調査結果があります。
また、日本では「在宅勤務よりもオフィス勤務の方が効率的」と考える人が多いというデータもあります。
では、なぜ日本では在宅勤務の生産性が低くなりやすいのでしょうか?
理由1:IT環境の整備が十分ではなかった
日本では、在宅勤務が急速に導入された一方で、企業のIT環境が十分に整っていなかったケースもありました。
たとえば、
- 紙の書類
- ハンコ
- FAX
- 会社に行かなければ使えないシステム
- オフィス内でしかアクセスできないデータ
などです。
この状態で「今日から自宅で仕事をしてください」と言われても、効率的に仕事ができるとは限りません。
つまり、
オフィスでしか仕事ができない仕組みを残したまま、働く場所だけを自宅に移してしまった
という問題があったわけです。
これは、在宅勤務そのものが悪いというより、準備不足の問題と言えるでしょう。
理由2:日本型雇用との相性
日本企業では、長年「メンバーシップ型」と呼ばれる雇用が中心でした。
簡単に言えば、
「この仕事をする人を採用する」というより、「会社の一員として採用し、その人に仕事を割り振る」
という考え方です。
一方、ジョブ型雇用では、担当する仕事や役割が比較的明確です。
「この仕事を、この成果まで達成する」
という形であれば、働く場所が会社でも自宅でも、成果を評価しやすくなります。
しかし、仕事内容が曖昧なまま在宅勤務を導入すると、
「今日は何をしているのか?」
「本当に仕事をしているのか?」
といった不安が上司や会社側に生まれやすくなります。
一方、社員側も、
「ちゃんと働いていると思われているだろうか?」
と不安になり、必要以上に報告や連絡を増やしてしまうことがあります。
このような「見えないことによる管理コスト」が、在宅勤務の生産性を下げる要因になる可能性があります。
理由3:自宅の仕事環境
日本の都市部では、住宅事情も問題になります。
アメリカなどでは、自宅に専用の書斎や広い仕事スペースを確保できる人もいます。
しかし、日本の都市部では、
- ワンルーム
- 狭いリビング
- 家族と共有するスペース
で仕事をしなければならない人も少なくありません。
ベッドのすぐ隣に仕事用の机がある。
家族がテレビを見ている横で仕事をする。
このような環境では、集中するのが難しい人がいても不思議ではありません。
日本の住宅事情も、在宅勤務の生産性に影響を与えている可能性があります。
「在宅勤務=サボる」は本当なのか?
ここまで見てきたように、在宅勤務にはメリットとデメリットがあります。
在宅勤務だから社員が怠ける。
出社しているから社員は真面目に働いている。
このように単純に判断することはできません。
会社に出社していても、仕事中に長時間雑談をしている人はいるでしょう。
逆に、在宅勤務でも誰にも見られていない環境で、黙々と仕事をしている人もいます。
重要なのは、
「働いている場所」ではなく、「どのような成果を出しているか」
なのかもしれません。
もちろん、成果を正しく測定することが難しい仕事もあります。
そのため、すべての会社が成果だけで評価できるわけではありません。
しかし、単純に「会社にいる時間が長い=生産性が高い」と考えるのも危険です。
日本ではハイブリッド勤務が最適なのか?
完全在宅勤務と完全出社。
この2つのどちらかに極端に振り切るのではなく、最近はその中間となる「ハイブリッド勤務」に注目が集まっています。
たとえば、
- 月曜日と金曜日は在宅勤務
- 週2〜3日は出社
- 集中作業は在宅
- 会議やチーム活動は出社
といった働き方です。
この方法であれば、
在宅勤務の集中力と、出社によるコミュニケーションの両方を活用できる
可能性があります。
もちろん、すべての企業に最適な働き方というわけではありません。
しかし、「完全出社」か「完全在宅」かという二択ではなく、仕事内容に応じて柔軟に働く方が合理的なケースは多いでしょう。
まとめ:在宅勤務は「怠ける働き方」ではなく「自己管理が必要な働き方」
今回のテーマをまとめると、在宅勤務には以下のような特徴があります。
在宅勤務のメリット
- 通勤時間がなくなる
- 自分のペースで仕事ができる
- 集中しやすい環境を作れる
- 育児や介護との両立がしやすい
- 優秀な人材の離職を防げる可能性がある
在宅勤務のデメリット
- 誘惑が多い
- 仕事とプライベートの切り替えが難しい
- コミュニケーションが減る
- 新人教育が難しい場合がある
- 働きすぎてしまう可能性がある
- 自己管理能力が求められる
結局のところ、在宅勤務が向いているかどうかは、人によって大きく異なります。
そして企業側も、
「在宅勤務だから生産性が下がる」
と考えるのではなく、
「どの仕事を、どの環境で行えば最も成果が出るのか」
を考える必要があるのではないでしょうか。
筆者自身は、在宅勤務をしたら誘惑に負けてしまう可能性が高いと思っています。
自宅には、スマートフォンもあります。
漫画もあります。
動画も見られます。
そして、何よりベッドがあります。
これはかなり危険です。
「少しだけ横になるか……」
これが一番危険な気がします(笑)
一方で、在宅勤務の方が集中できる人もいるでしょう。
会社に出社した方が仕事がはかどる人もいれば、自宅の方が効率よく働ける人もいます。
だからこそ、今後の働き方は、
「全員を出社させる」
「全員を在宅勤務にする」
という極端な二択ではなく、仕事内容や個人の特性に応じた働き方を選べる方向に進んでいくのが理想なのかもしれません。
皆さんは、在宅勤務と出社勤務ではどちらが仕事に集中できますか?
在宅勤務をしたことがある方は、実際に生産性が上がったでしょうか?
それとも、ついついスマートフォンや動画などの誘惑に負けてしまったでしょうか?
ぜひコメントで教えてください😄
それではまた別の記事でお会いしましょう
🟡 おまけコーナー:「明日って何の日?」
8月15日
【刺身の日】
室町時代の1448(文安5)年8月15日、書記官の中原康富が記した日記『康富記』に、「刺身」という言葉が日本で初めて文書に登場したことに由来しています。
なぜ「刺身」と呼ばれるようになった?
日記の記述や歴史的背景から、名前の由来には以下の2つの有力な説があります。
- ヒレを刺して目印にした説:切り身にしてしまうと魚の種類(鯛なのか、他の魚なのか)が分からなくなるため、その魚のヒレを身に刺して目印にしたという説です。『康富記』にもこの旨が記録されています。
- 武家社会の忌み言葉を避けた説:当時は武家社会だったため、「切る」という言葉が縁起の悪い「忌み言葉」として嫌われ、「刺す」という表現に置き換えられたという説です。
その他の豆知識
- 「刺身」と「お造り」の違い:関東では「お刺身」、関西では「お造り」と呼ばれることが多いです。これも「切る」を避けた関西の文化が影響していると言われています。
- もう一つの初出説:1399(応永6)年6月10日の文献『鈴鹿家記』に「指身」という記述があり、これが最古の記録という説もありますが、現在の記念日は8月15日の『康富記』がベースとなっています。
詳細な歴史や活用事例については、PR TIMESのマガジン記事 などでも紹介されています。