なぜ「日本一」は覚えているのに2位や3位は知らない?実はビジネスにも使われる「2位・3位の戦略」

なぜ「日本一」は知っているのに、2位や3位は知らないのか?

「日本一高い山は?」

こう聞かれたら、多くの人が「富士山」と答えられるでしょう。

では、

「日本で2番目に高い山は?」

と聞かれたらどうでしょうか?

すぐに「北岳」と答えられる人は、どのくらいいるでしょう。

ちなみに、富士山の標高は3,776m。日本で2番目に高い山は、南アルプスにある北岳で標高3,193mです。

このように、私たちは「日本一」や「世界一」といった1位の情報は覚えているのに、2位や3位になると急に答えられなくなることがあります。

これは山だけではありません。

  • 日本一長い川は?
  • 日本で2番目に長い川は?
  • 日本一大きな湖は?
  • 日本で3番目に大きな湖は?
  • 日本で一番広い都道府県は?
  • 2番目に広い都道府県は?

こう聞かれると、「1位は分かるけど、2位は知らないな……」となる人も多いのではないでしょうか。

ところが、街中を歩いていると、

「日本で2番目においしい○○」

「日本で3番目に人気の○○」

といった、少し変わったキャッチコピーを見かけることがあります。

「1位じゃないのに、なぜわざわざ2位や3位をアピールするの?」

そう思う一方で、なぜか気になってしまう。

実はこの「気になる」という感情こそが、マーケティングに利用されているのです。

今回は、

  • なぜ「1位」ばかりが記憶に残るのか
  • 実はすごい日本の2位・3位
  • なぜ「日本で2番目」という看板に惹かれるのか
  • ビジネスで使われる「2位の戦略」とは何か
  • なぜ3位はユーモアとして成立しやすいのか
  • 4位や5位になると何が変わるのか

について、身近な例を交えながら考えてみたいと思います。


1位は知っているのに、2位や3位は知らない。その理由とは?

まずは、身近な「日本一」を見てみましょう。

ジャンル1位2位3位
山の高さ富士山北岳奥穂高岳
川の長さ信濃川利根川石狩川
湖の面積琵琶湖霞ヶ浦サロマ湖
都道府県の面積北海道岩手県福島県

どうでしょうか。

富士山、信濃川、琵琶湖、北海道。

これらは、ほとんどの人が聞いたことのある名前です。

しかし、2位や3位になると、知名度は一気に下がります。

もちろん北岳や利根川、霞ヶ浦、岩手県なども非常に有名です。

ただ、「日本一」という称号を持つものと比べると、一般的な知名度には大きな差があるように感じます。

なぜなのでしょうか。


「1位」という数字には、それだけで強い意味がある

私たちは日常生活の中で、常に大量の情報にさらされています。

ニュース、広告、SNS、テレビ、動画、会話。

すべての情報を細かく覚えていたら、脳はすぐにパンクしてしまいます。

そこで人間の脳は、情報をある程度整理し、

「これは重要そうだ」

「これは覚えておく価値がありそうだ」

というものを優先して記憶します。

そのとき、非常に強い力を持つのが、

「1位」

という数字です。

「日本一」

「世界一」

「史上初」

「最大」

「最速」

「最高」

こうした言葉には、単なる数字以上のインパクトがあります。

たとえば、

日本で一番高い山=富士山

という情報は、非常にシンプルです。

しかし、

日本で2番目に高い山=北岳

となると、「そもそも北岳ってどこにある山だっけ?」となる人も少なくありません。

つまり、1位には、

「1位であること」そのものがブランドになる

という強さがあります。

富士山は、ただの山ではありません。

「日本一高い山」という肩書きが、富士山の知名度をさらに高めています。


実は2位や3位も、とんでもなくすごい

ここで少し考えてみたいことがあります。

2位や3位は、決して「普通」ではありません。

日本に数えきれないほど存在する山や川、湖の中で、全国2位や3位に入るというのは、それだけで非常にすごいことです。

たとえば、北岳。

富士山には標高で及びませんが、標高3,193mを誇ります。

これは十分すぎるほどの大自然です。

利根川も同じです。

長さでは信濃川に次ぐ2位ですが、関東地方を流れる大河として、私たちの生活や産業を支える重要な存在です。

霞ヶ浦も、面積では琵琶湖に次ぐ2位。

しかし、霞ヶ浦には霞ヶ浦ならではの自然や歴史があります。

つまり、

「2位だから価値が低い」のではなく、1位があまりにも有名すぎるために、相対的に目立ちにくくなっている

ということです。

1位が強すぎる。

そのせいで、2位以下が霞んでしまう。

これは、少し不思議な現象ですよね。


では、なぜ「日本で2番目」という看板は気になるのか?

ここからが、今回の本題です。

街中で、

「日本一おいしい!」

という看板を見かけても、そこまで珍しくないかもしれません。

「日本一」「世界一」「絶品」「究極」。

こうした言葉は、飲食店や商品の広告でよく使われています。

しかし、

「日本で2番目においしい!」

と書いてあったらどうでしょうか。

「え? 1番目はどこ?」

「なんで2番目?」

「それでも十分すごくない?」

と、思わず考えてしまいませんか?

ここに「2位の戦略」の面白さがあります。


2位の戦略①「日本一」よりも、逆に信じやすい

「日本一おいしい!」

と宣伝する店があったとします。

もちろん、本当においしいのかもしれません。

しかし、見る側は、

「本当に日本一なの?」

「誰が決めたの?」

「自分で言っているだけでは?」

と、少し疑ってしまうことがあります。

「日本一」という言葉は強い反面、ハードルも高いのです。

一方で、

「日本で2番目においしい」

と言われると、少し印象が変わります。

「1位ではない」と正直に言っているように感じるからです。

この、

あえて最高を名乗らないことによって、かえって誠実に見える

という効果があります。

もちろん、「日本で2番目」という順位が本当に公的なランキングなのか、自称なのかは別問題です。

しかし、広告としては、

「日本一です!」

よりも、

「あえて2番目です!」

のほうが、見る人の記憶に残ることがあります。


2位の戦略②「1位はどこ?」と気になってしまう

「日本で2番目においしい店」と書かれていたら、当然こう思います。

「じゃあ1位はどこなの?」

この疑問が、広告としては非常に強力です。

普通の看板なら、

「おいしい店なんだな」

で終わるかもしれません。

しかし「2番目」と書くことで、

「1位が別にある」

という情報まで同時に伝わります。

つまり、看板を見た人の頭の中に、

存在しない1位の情報まで生まれる

のです。

この「気になる」という感情が、店に入るきっかけになることがあります。


2位の戦略③「1位と同じ土俵で戦わない」

ビジネスの世界では、すでに圧倒的な1位が存在する市場に、真正面から挑むのは簡単ではありません。

そこで、

「1位になれないなら、1位とは違う見せ方をしよう」

という発想が生まれます。

これはマーケティングでいう「ポジショニング」の考え方に近いものです。

たとえば、

  • 高級店が多い場所で「気軽さ」を売りにする
  • 大手企業が多い市場で「地域密着」を売りにする
  • 価格競争の中で「品質」を売りにする

といった方法があります。

つまり、

すでに誰かが座っている「1位の席」を奪うのではなく、自分だけの席を作る

ということです。

「日本一」を名乗る店がたくさんあるなら、

「日本で2番目」

という席を自分で作ってしまう。

これも、立派なポジショニング戦略と言えるでしょう。


有名な「2位の戦略」──Avisの「We Try Harder」

2位を逆手に取った有名な広告戦略として、アメリカのレンタカー会社Avisの例があります。

当時、業界トップのHertzに対して、Avisは2番手の立場でした。

そこでAvisは、あえて自社が2位であることを隠しませんでした。

むしろ、

「私たちは2位です。だからこそ、もっと頑張らなければなりません」

というメッセージを打ち出しました。

有名なコピーが、

“We Try Harder”

です。

日本語にすると、

「私たちはもっと努力します」

という意味です。

この広告の面白いところは、

「1位に勝っています!」

と無理に主張しなかったことです。

むしろ、

「私たちは1位ではありません」

と認めたうえで、

「だからこそ、1位よりも努力します」

というストーリーに変えました。

これは非常に巧みです。

「2位」という弱点を隠すのではなく、逆に強みに変えています。

ここから学べるのは、

弱点を隠すことだけが戦略ではない

ということです。

場合によっては、弱点を堂々と見せることで、相手の共感や信頼を得ることもできます。


「日本で3番目」は、2位とはまた違う面白さがある

では、「日本で3番目」になるとどうでしょうか。

「日本で2番目」なら、

「1位ではないけれど、かなりすごい」

という印象があります。

一方、「日本で3番目」になると、少しユーモアが加わります。

たとえば、

「日本で3番目においしい店」

という看板があったら、

「1位と2位はどこ?」

と聞きたくなりますよね。

ここに、3位ならではの面白さがあります。


3位の魅力①「ツッコミ」が生まれる

3位は、看板だけでちょっとした会話が生まれます。

「日本で3番目においしいって、どういうこと?」

「じゃあ1位と2位は?」

「誰が決めたの?」

このように、自然なツッコミが生まれます。

そして店側が、

「1位はおふくろの味、2位は実家の味、だからうちは3位です」

などと返せば、そこで一つの小さなストーリーが完成します。

これは、単なる広告ではありません。

お客さんとの会話のきっかけになります。

そして、会話が生まれる店は記憶に残ります。


3位の魅力②「自信」と「謙虚さ」のバランスがちょうどいい

「日本一」と名乗ると、強気に見えることがあります。

「日本で2番目」なら、謙虚さが出ます。

そして「日本で3番目」になると、さらにユーモアが加わります。

つまり、

  • 1位:王道・自信
  • 2位:謙虚さ・対抗心
  • 3位:ユーモア・親しみやすさ

というように、数字によって印象が変わるのです。

特に、個人経営の店や屋台、キッチンカーなどでは、「日本一」を名乗るよりも、

「日本で3番目くらいがちょうどいい」

という親しみやすさが武器になる場合があります。

完璧すぎない。

ちょっとふざけている。

でも、なぜか気になる。

この絶妙なバランスが、3位の魅力なのかもしれません。


では、4位や5位になると効果は弱くなるのか?

ここで気になるのが、

「じゃあ4位や5位はどうなの?」

という疑問です。

正直に言うと、一般的な広告としては、2位や3位に比べると順位のインパクトは弱くなりやすいでしょう。

「日本で4番目においしい店」

と言われても、

「なぜ4番目?」

という疑問は生まれます。

しかし、2位や3位ほどの「定番の面白さ」はありません。

とはいえ、4位や5位が絶対に使えないわけではありません。

むしろ、

「日本で5番目に○○」

と、あえて中途半端な順位を名乗ることで、逆に笑いを生むこともできます。

ここで重要なのは、

順位そのものよりも、そこに理由やストーリーがあるかどうか

です。

例えば、

「ランキングで本当に5位だった」

なら、それは実績になります。

「1位から4位は全部、自分の家族が好きな店」

なら、ネタになります。

「日本で5番目に早く閉まる店」

なら、意味不明さが逆に面白くなります。

つまり、4位や5位は、

数字だけでは弱いが、ストーリーやユーモアと組み合わせることで武器になる

ということです。


「3」という数字が特別に感じられる理由

私たちは日常生活の中で、「3」という数字をよく使います。

  • 三大○○
  • 金・銀・銅
  • 3本柱
  • 3つのポイント
  • 3段階評価
  • 三拍子

「3つ」というまとまりは、情報として理解しやすく、話としても展開しやすい数字です。

たとえば、

「AとBとC」

と3つ並べるだけで、一つのまとまりに感じられます。

物語でも、

1回目
2回目
3回目

という「三段構成」は、非常に使いやすい形です。

そのため、

「日本で3番目」

という言葉にも、

「1位、2位、3位」

という一つのランキングの完成形が感じられます。

一方で、4位や5位になると、

「まだまだ続くランキングの途中」

という印象が強くなります。

この違いが、3位までの数字に特別な存在感を与えているのかもしれません。


「日本一」だけでなく、「日本で2番目」を探してみると面白い

私たちは普段、

「一番高い」

「一番大きい」

「一番人気」

といった情報に注目しがちです。

しかし、2位や3位に目を向けてみると、意外な発見があります。

例えば、

「日本で2番目に高い山は?」

「日本で3番目に大きい湖は?」

「自分の住んでいる地域で2番目に古い建物は?」

「地元で3番目に人気の店は?」

などです。

「1位」は有名すぎるため、すでに多くの人が知っています。

しかし、2位や3位になると、少しマニアックな世界に入っていきます。

だからこそ、

「そんな場所があったの?」

「そんな記録を持っていたの?」

という新しい発見が生まれます。


まとめ:1位以外にも、人の心を動かす数字がある

「日本一」という言葉は、確かに強力です。

1位は覚えやすく、話題にもなりやすく、ブランドにもなります。

しかし、だからといって2位や3位に価値がないわけではありません。

むしろ、ビジネスや広告では、

1位ではないことを逆手に取る

という戦略があります。

今回の内容をまとめると、

1位

王道の強さ

「日本一」「世界一」という肩書きそのものがブランドになる。

2位

謙虚さと対抗心

「1位ではない。だからこそ頑張る」というストーリーを作りやすい。

3位

ユーモアと親しみやすさ

「なぜ3位?」というツッコミを生み、会話のきっかけになる。

4位・5位

数字だけでは弱くなりやすいが、ストーリー次第でネタになる

という特徴があります。

結局のところ、数字そのものが人を惹きつけるというより、

「なぜその順位なの?」と思わせる違和感

が、人の興味を引き出しているのかもしれません。

「日本一」と書かれていれば、

「すごいんだな」

で終わるかもしれません。

しかし、

「日本で2番目」

と書かれていたら、

「1位はどこ?」

と考えてしまう。

「日本で3番目」と書かれていたら、

「なぜ3番目なんだ(笑)」

とツッコミたくなる。

このように考えると、街中の看板や広告も、ただの宣伝ではなく、

人間の心理を利用した小さな仕掛け

に見えてきます。

筆者自身も、「日本で2番目に○○」という看板を見かけると、つい目で追ってしまいます。

「1位じゃないのに、なぜ2位をアピールするんだろう?」

そう考えた時点で、その看板の広告戦略は、すでに成功しているのかもしれません。

皆さんも今度、街を歩いていて、

「日本で2番目の○○」

「日本で3番目の○○」

という看板を見つけたら、ぜひ立ち止まってみてください。

そして、

「このお店は、なぜ1位ではなく2位や3位をアピールしているんだろう?」

と考えてみると、いつもの街並みが少し違って見えるかもしれません。

もしかすると、その看板を見てしまった時点で、あなたはすでにその店のマーケティング戦略に引っかかっているのかもしれませんね(笑)

それではまた別の記事でお会いしましょう


🟡 おまけコーナー:「明日って何の日?」

8月13日

【国際左利きの日】

「国際左利きの日(International Lefthanders Day)」は、国際的な記念日です。

右利き中心に設計された社会の中で、左利きの人が直面する不便さや日常生活での課題(文房具、ハサミ、自動改札など)への理解を深め、誰もが安全に使えるユニバーサルデザインの普及や生活環境の向上をメーカー等に呼びかけることを目的としています。同時に、少数派(世界人口の約10%)である左利きの「個性や才能」を祝福する日でもあります。

1. 由来と歴史

  • 始まり:1976年にアメリカの「Lefthanders International(左利き国際協会)」の創設者ディーン・R・キャンベル氏が提唱したのが始まりとされています。その後、1992年にイギリスの団体「Left-Handers Club(左利きクラブ)」が8月13日を正式な記念日として改めてローンチし、世界へ広がりました。
  • 日付の理由:この記念日を提唱した人物の誕生日にちなんで決定されたと言われています。

2. 日本における「左利きの日」との違い

実は日本には、8月13日とは別に独自の記念日が存在します。

  • 2月10日(左利きグッズの日):「0210」が英語の「レフト(0=レ、2=フ、10=ト)」と読める語呂合わせから、2001年に日本サウスポークラブによって制定されました(のちに「左利きグッズの日」に改称)。
  • なぜ2つあるの?:本家である「8月13日」は、日本国内だとちょうどお盆休みの時期に重なります。そのため、日本独自のイベントや啓発活動、メディアでの発信などが難しかったことから、あえて2月10日を国内の記念日として定めたという経緯があります。

3. 世界での主なイベント内容

海外(特にイギリスなど)では、右利きの人たちに「左利きの世界」を体感してもらうユニークなイベントが毎年企画されています。

  • 利き手逆転体験:右利きの人に左手だけでハサミや缶切り、コルク抜きを使ってもらい、その不便さを身をもって知ってもらう。
  • スポーツ対決:左利きチーム vs 右利きチームによる親善試合や、左手だけでプレイするゲームの開催。
  • 左利き用グッズの特設:文房具メーカーやショップが、左利き用のハサミ、定規、ノートなどを紹介するキャンペーンを実施する。