皆さんは、自分の老後について考えたことがありますか?
「老後は誰かに支えてもらえるだろう」と思っていても、結婚する・しない、子どもがいる・いない、兄弟姉妹がいる・いないなど、将来の生活環境は人によって大きく異なります。
特に、一人暮らしの高齢者や、頼れる親族が身近にいない人にとっては、
「病院に入院するとき、身元保証人はどうしよう?」
「介護施設に入るとき、誰に手続きを頼めばいい?」
「亡くなった後の葬儀や遺品整理は誰がやってくれるの?」
といった問題が出てくる可能性があります。
こうした「おひとり様」の不安を支えるサービスの一つが、高齢者等終身サポート事業です。
身元保証や日常生活の支援、死後の手続きなどを、家族や親族に代わってサポートしてくれるサービスで、今後ますます必要性が高まると考えられています。
一方で、このサービスをめぐっては、契約内容や料金、解約・返金などに関するトラブルも発生しています。
実際、国民生活センターは2025年5月に、高齢者サポートサービスについて、約190万円を支払ったものの、利用時に別途料金を請求され、解約を申し出たところ「半分しか返せない」と言われた事例を紹介しています。
そこで今回は、
- おひとり様終身サポートとは何なのか
- どのようなトラブルが起きているのか
- 契約してしまった場合はどうすればいいのか
- 契約前に何を確認すればいいのか
- 今後このサービスはどうなっていくのか
について、できるだけ分かりやすく整理してみます。
老後の準備は、まだ先の話だと思っている人にも、ぜひ知っておいてほしい内容です。
そもそも「おひとり様終身サポート」とは?
まず、「おひとり様終身サポート」という言葉について確認しておきましょう。
一般的には、家族や親族に代わって、高齢者の生活を長期的に支援するサービスを指します。
国の資料では「高齢者等終身サポート事業」という名称が使われています。
具体的なサービス内容は事業者によって異なりますが、例えば次のようなものがあります。
身元保証に関するサポート
病院への入院や介護施設への入所などの際に、身元保証や手続きの支援を行うサービスです。
日常生活のサポート
買い物や各種手続き、見守りなど、日常生活に関する支援を行う場合があります。
死後事務のサポート
本人が亡くなった後の葬儀や納骨、各種契約の解約、遺品整理などについて、契約内容に応じて手続きを支援します。
このように考えると、「家族に頼ることが難しい人にとって必要なサービス」という側面があることが分かります。
実際、国も高齢者等終身サポート事業について、今後ニーズが増えることを見込んでいます。
一方で、契約期間が長期になりやすく、サービス提供より前に費用を預ける場合があることから、利用者保護の必要性も指摘されています。
つまり、
「必要なサービスだからこそ、契約内容を慎重に確認する必要がある」
ということです。
おひとり様終身サポートで返金トラブルが起きるのはなぜ?
ここで気になるのが、今回のテーマでもある「返金トラブル」です。
終身サポートでは、契約時に一定のお金を支払ったり、将来のサービスに使うためのお金を前もって預けたりするケースがあります。
そのため、
「契約したけれど、やっぱり利用するのをやめたい」
「事業者の対応に不安を感じるようになった」
「説明を聞いていた内容と実際のサービスが違った」
といった場合に、解約したときのお金の扱いが問題になる可能性があります。
国民生活センターが2025年5月に紹介した事例では、80歳代の契約者が、身元保証・生活支援・葬送支援を行う事業者と約190万円で契約しました。
ところが、契約時には「190万円以外にお金はいらない」と説明されていたにもかかわらず、サービスを利用すると、その都度料金を請求されたとされています。
その後、解約を申し出たところ「半分しか返せない」と言われたという事例です。
これはあくまで一つの相談事例ですが、契約時に「総額はいくらなのか」「どこまでが基本料金なのか」「解約するといくら戻ってくるのか」を確認する重要性を示しています。
特に注意したい3つのポイント
終身サポートを検討するときは、料金の安さだけを見るのではなく、次のポイントを確認しておきましょう。
① 支払総額が分かりやすくなっているか
「基本料金○万円」と書かれていても、それですべてのサービスを利用できるとは限りません。
例えば、
- 身元保証料
- 月額料金
- 見守り料金
- 生活支援料金
- 入院時の対応費
- 葬儀・納骨費用
- 死後事務費用
- 遺品整理費用
- 各種手続きの実費
など、別々に料金が設定されている場合があります。
契約前には、
「結局、全部でいくらかかるのか?」
を確認することが重要です。
「○万円払えば全部やってもらえると思っていた」という認識のズレが、後々のトラブルにつながる可能性があります。
② 解約したらいくら返金されるのか
ここは特に重要です。
契約するときには、
「もし途中で解約したらどうなりますか?」
と聞いておきましょう。
確認したいのは、
- 解約そのものができるのか
- 解約手数料はいくらなのか
- すでに支払った料金のうち、何が返金されるのか
- 預託金はどのように返還されるのか
- すでに発生した費用はどう計算されるのか
- 死後事務のために預けたお金はどう扱われるのか
といった点です。
「解約できます」と言われただけでは不十分です。
「解約した場合のお金の計算方法を、契約書で確認する」
ことが大切です。
③ 預けたお金がどのように管理されているか
終身サポートでは、将来のサービス費用として事業者にお金を預けるケースがあります。
ここで確認したいのが、そのお金の管理方法です。
事業者の運営資金と利用者から預かったお金が混在していないか、分別して管理されているかなどを確認しましょう。
国のガイドラインでも、利用者から前払い金・預託金を受け取る場合には、事業者自身の運営資金などとの混在を防ぎ、適切に管理することが重要とされています。
また、実際に信託を活用して預託金を管理している事業者があることも、政府の消費者委員会で説明されています。
ただし、
「信託だから絶対に安心」
と単純に考えるのではなく、
「どこで、誰が、どのように管理しているのか」
まで確認することが大切です。
すでに契約している場合はどうすればいい?
「この記事を読んでいたら、自分も終身サポートを契約している……」
という人もいるかもしれません。
その場合、いきなり事業者へ「解約します」と連絡する前に、まず契約内容を整理してみましょう。
もちろん、緊急性がある場合や、事業者との連絡が取れないなどの事情がある場合は、早めに専門機関へ相談してください。
STEP1 契約書を確認する
まず探してほしいのが、
契約書・重要事項説明書・料金表・預託金に関する書類
などです。
特に確認したいのは、
- 契約期間
- 月額料金
- 初期費用
- 預託金
- サービスごとの料金
- 解約条件
- 返金条件
- 解約手数料
- 死後事務に関する費用
- 預託金の管理方法
などです。
「自分が何にいくら支払ったのか」を一覧にしてみるだけでも、状況がかなり分かりやすくなります。
STEP2 事業者とのやり取りを記録する
事業者との会話やメール、書面などはできるだけ残しておきましょう。
例えば、
「契約時には追加料金はないと言われた」
「解約すると○万円返金すると説明された」
「担当者から○月○日に電話があった」
など、具体的な内容を記録しておきます。
メールや書面が残っている場合は、削除せず保管しておきましょう。
STEP3 消費生活センターに相談する
「解約したいけれど返金されない」
「説明された料金と実際の請求額が違う」
「契約内容がよく分からない」
「事業者に解約を申し出たが話が進まない」
といった場合には、**消費者ホットライン「188」**に相談できます。
188に電話すると、原則として最寄りの消費生活センターなどにつながります。
契約トラブルは、自分だけで事業者と交渉しようとすると負担が大きくなることがあります。
「これっておかしいかも?」
と思った段階で相談してみるのも一つの方法です。
STEP4 地域包括支援センターなどにも相談する
高齢者の場合は、消費生活センターだけでなく、地域包括支援センターなどに相談する方法もあります。
地域包括支援センターは、高齢者の介護や生活などについて相談できる地域の窓口です。
また、自治体によっては、身寄りのない高齢者を支援する取り組みを行っている場合もあります。
民間サービスと契約する前に、
「自治体や地域で利用できる支援はないか?」
を確認してみるのも大切です。
「クーリング・オフできる?」にも注意
契約してしまった後に、
「クーリング・オフすればいいのでは?」
と考える人もいるかもしれません。
ただし、すべての終身サポート契約が無条件にクーリング・オフできるわけではありません。
クーリング・オフが適用されるかどうかは、契約方法やサービス内容、適用される法律などによって異なります。
そのため、
「契約してから○日以内なら必ずクーリング・オフできる」
と決めつけないことが重要です。
契約直後で解約を考えている場合は、契約書を用意して消費生活センターなどに相談しましょう。
国も「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」を策定
こうしたトラブルを背景に、国も何もしていないわけではありません。
2024年6月、関係府省が連携して、**「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」**が策定されました。
このガイドラインでは、
- 契約内容を適切に説明すること
- 利用者の意思や尊厳を尊重すること
- サービス内容や料金を明確にすること
- サービス提供の記録を作成・保存すること
- 利用者から預かったお金を適切に管理すること
- 契約解除に必要な手順などを情報提供すること
- 個人情報を適切に取り扱うこと
- 相談窓口を設置すること
など、事業者が適切にサービスを提供するための考え方が整理されています。
また、利用者が事業者を選ぶ際の判断材料として活用できるよう、チェックリストも用意されています。
つまり、終身サポートを検討している人は、
「国のガイドラインでは何が求められているのか?」
を事業者選びの参考にすることができます。
終身サポート事業そのものが悪いわけではない
ここは非常に大切なポイントです。
今回の記事ではトラブルについて取り上げていますが、
「終身サポート事業=危険なサービス」
という意味ではありません。
家族や親族に頼ることが難しい人にとって、身元保証や生活支援、死後事務をサポートしてくれるサービスは、今後ますます必要になる可能性があります。
一方で、長期間にわたる契約になることがあり、まとまったお金を前もって支払うケースもあります。
だからこそ、
必要性と契約内容を分けて考えること
が重要です。
「自分には必要なサービスだから契約しよう」
という判断と、
「この事業者、この契約内容で大丈夫なのか?」
という判断は別々に考えたほうがいいでしょう。
これからトラブルは増える?今後の課題とは
今後、こうしたサービスへの需要が高まる可能性はあります。
日本では高齢化が進み、一人暮らしの高齢者への支援が重要な社会課題になっています。
政府も、身寄りのない高齢者への支援について、自治体などによる相談窓口や支援体制の整備を進めています。
つまり今後は、
「家族がいない・頼れる人が少ない場合、誰が生活や死後の手続きを支えるのか?」
という問題を、社会全体で考えていく必要があります。
民間の終身サポート事業者だけに任せるのではなく、
- 自治体
- 社会福祉協議会
- 地域包括支援センター
- 医療・介護関係者
- 成年後見制度
- 民間の終身サポート事業者
など、それぞれの役割を組み合わせていくことも重要になってくるでしょう。
契約前に確認したい「7つのチェックポイント」
最後に、終身サポートを検討している人向けに、重要なポイントをまとめておきます。
① 何をしてくれるサービスなのか?
身元保証、生活支援、死後事務など、サービス内容を具体的に確認する。
② 総額はいくらなのか?
初期費用だけではなく、月額料金やサービスごとの追加費用、実費まで確認する。
③ 解約できるのか?
途中で解約できるのか、解約時の手続きや条件を確認する。
④ 解約するといくら戻るのか?
返金される費用と返金されない費用を、契約前に確認する。
⑤ 預託金はどう管理されているのか?
事業者の運営資金と分けて管理されているかなどを確認する。
⑥ 契約書や重要事項説明書を読んだか?
口頭での説明だけではなく、書面で確認する。
⑦ 第三者に相談したか?
家族、友人、専門家、消費生活センター、地域包括支援センターなどに相談してから契約する。
まとめ
今回は「おひとり様終身サポート」について、返金トラブルや契約時の注意点を調べてみました。
高齢者等終身サポート事業は、家族や親族に頼ることが難しい人にとって、生活や老後を支える選択肢の一つです。
一方で、契約期間が長くなりやすく、まとまったお金を前払いするケースもあるため、
「料金はいくらなのか?」
「追加料金は発生するのか?」
「途中で解約したらどうなるのか?」
「預けたお金はどのように管理されているのか?」
といった点を、契約前に確認することが重要です。
特に「○万円払えば全部やってくれる」と思っていたのに、実際にはサービスを利用するたびに追加料金が発生する、といった認識のズレはトラブルにつながる可能性があります。
そして、もし契約後に「何かおかしい」と感じたら、一人で抱え込まないこと。
消費者ホットライン「188」や地域包括支援センターなど、公的な相談窓口を利用しましょう。
老後の不安を減らすためのサービスなのに、契約したことで新たな不安を抱えてしまっては本末転倒です。
だからこそ、
「サービスが必要かどうか」だけではなく、「どの事業者と、どんな契約を結ぶのか」まで確認する。
これが、おひとり様終身サポートを利用するときの大切なポイントではないでしょうか。
老後のことは、できれば考えたくないテーマかもしれません。
でも、元気なうちだからこそ、自分の意思で決められることもあります。
「自分だったら老後に誰を頼るのか?」
そんなことを考えるきっかけとして、今回の記事を役立ててもらえたらうれしいです。
それではまた別の記事でお会いしましょう
🔗 参考
🟡 おまけコーナー:「明日って何の日?」
10月17日
【沖縄そばの日】
「沖縄そばの日」とは、沖縄のソウルフードである「沖縄そば」の名称を守り抜いたことを記念する日です。沖縄生麺協同組合が1997年に制定しました。
この記念日には、沖縄の食文化を守るための熱い歴史が隠されています。
由来と歴史
- 「そば」ではないという指摘: 1972年の沖縄の本土復帰から数年後の1976年、公正取引委員会から「沖縄そばは蕎麦粉をまったく使用していない(小麦粉100%である)ため、『そば』と表示してはならない」という指導が入りました。当時の規約では、蕎麦粉を3割以上使用していないと「そば」と呼べなかったためです。
- 伝統を守るための闘い: 「親しまれてきた食文化と名前を変えてはならない」と、沖縄生麺協同組合などが中心となって何度も交渉を重ねました。
- 正式な認可: その熱意が実を結び、1978年10月17日に全国めん類公正取引協議会から「本場沖縄そば」としての特殊名称の登録が正式に認められました。この勝ち取った日を記念して、10月17日が「沖縄そばの日」となりました。
「本場沖縄そば」の厳しい定義
現在では、単に沖縄で作られたそばというわけではなく、原料や熟成、麺の太さ、伝統的な製法(かんすい、または木灰汁の使用など)を含む12の厳しい定義が定められており、それらをクリアしたものだけが「本場沖縄そば」を名乗ることができます。
当日のイベント
毎年10月17日になると、沖縄県内の多くの沖縄そば店や観光施設、沖縄観光情報WEBサイト おきなわ物語などのプラットフォームで、割引キャンペーンや限定メニューの販売、スタンプラリーといった様々なイベントが開催され、県内外の人々に親しまれています。