選択的夫婦別姓が導入されていない現在、夫婦が別姓を選ぶと何が起きる?制度と現状をわかりやすく解説

近年、「多様性」という言葉を耳にする機会が増えました。

その中でも長年議論が続いているテーマの一つが、「選択的夫婦別姓」です。

「結婚しても、それぞれ生まれたときの名字を使いたい」

そう考える人がいる一方で、

「夫婦なら同じ名字のほうが家族として分かりやすいのでは?」

という意見もあります。

では、現在の日本の制度では、夫婦がそれぞれ違う姓を名乗りたい場合、実際にはどうなるのでしょうか?

今回は、現在の法律や制度をもとに、

  • 現在の夫婦の姓に関するルール
  • 別姓を希望した場合に起こること
  • なぜ別姓を希望する人がいるのか
  • 子どもの姓や親権はどうなるのか
  • 海外ではどのような制度なのか

について、できるだけ分かりやすく整理してみます。

※この記事は2026年10月時点の制度・公表資料をもとにしています。


そもそも「選択的夫婦別姓」とは?

まず、「選択的夫婦別姓」という言葉から確認してみましょう。

選択的夫婦別姓とは、簡単にいうと、

「結婚した夫婦が、同じ姓を名乗るか、それぞれ結婚前の姓を名乗るかを選べるようにする制度」

のことです。

ポイントは「選択的」という部分です。

夫婦全員が別姓になるわけではありません。

これまでどおり、

「夫婦で同じ姓を名乗りたい」

という人は、同じ姓を選択できます。

一方、

「結婚しても、それぞれの姓をそのまま使いたい」

という夫婦には、別々の姓を選ぶ選択肢を認めるという考え方です。

法務省も、現在の制度では結婚する際に夫または妻のどちらか一方が氏を改める必要があり、選択的夫婦別氏制度は、希望する夫婦が婚姻前の氏をそのまま名乗れるようにする制度だと説明しています。


現在の日本では、夫婦は同じ姓を名乗る必要がある

現在の民法では、婚姻する際に夫婦のどちらか一方が姓を変え、夫婦が同じ姓を名乗る仕組みになっています。

つまり、

「私は自分の姓を使いたい」

「相手も自分の姓を使いたい」

という2人が、それぞれの姓を維持したまま法律上の夫婦になることは、現在の制度ではできません。

別姓のまま生活したい場合には、法律婚ではなく事実婚を選択するという方法があります。

ただし、ここで重要なのは、

「事実婚」と「法律婚」は、社会生活上は夫婦として暮らしていても、法律上の扱いが同じではない

ということです。

この違いが、夫婦別姓を考えるうえで大きなポイントになります。


別姓を希望して事実婚を選ぶと、どんな違いがある?

では、法律婚ではなく事実婚を選んだ場合、具体的に何が変わるのでしょうか。

代表的なものを見ていきます。

1.法律上の「配偶者」として扱われない制度がある

事実婚であっても、社会保険など一部の制度では法律婚と同様に扱われる場合があります。

しかし、すべての制度が同じというわけではありません。

代表的なのが税制です。

所得税の「配偶者控除」について、国税庁は、民法上の婚姻関係にある配偶者が対象であり、いわゆる内縁・事実婚の相手は対象にならないとしています。

そのため、

「夫婦として生活しているのだから、法律婚の夫婦とすべて同じ扱いになる」

とは限りません。

これは事実婚を選択する場合に知っておきたいポイントです。


2.相続でも大きな違いがある

もう一つ大きな違いが「相続」です。

法律婚の配偶者は法定相続人になります。

一方、事実婚のパートナーは、法律上の配偶者ではないため、原則として法定相続人にはなりません。

もちろん、遺言によって財産を遺贈することは可能です。

しかし、その場合でも法律婚の配偶者に認められている「配偶者の税額軽減」は、事実婚のパートナーには適用されません。

つまり、

「長年一緒に暮らしていたパートナーだから、自動的に配偶者として財産を相続できる」

という仕組みではないのです。

この点は、夫婦別姓を考えるときに非常に重要なポイントです。


3.子どもに関する制度も確認が必要

夫婦別姓の議論では、「子どもの姓はどうなるの?」という問題もよく出てきます。

ここは、

「法律婚の夫婦が別姓を選択する場合」

と、

「婚姻届を提出せず事実婚で生活する場合」

を分けて考える必要があります。

現在の日本では、法律婚の夫婦は同じ姓を名乗ることになっているため、そもそも「別姓の法律婚」はまだ制度として存在していません。

一方、婚姻関係にない父母の間に生まれた子については、父子関係は認知などによって法律上成立します。

また、婚姻関係にない父母の間に生まれた子の親権については、2026年4月から施行された「離婚後の共同親権」の制度とは区別して考える必要があります。

今回の改正は主として離婚後の親権などに関するものであり、事実婚の家庭について「法律婚の夫婦とまったく同じ共同親権制度になった」という意味ではありません。

このため、夫婦別姓を考える場合は、

「夫婦の姓」だけでなく「子どもの姓」「親子関係」「親権」についても別々に考える必要があります。


4.医療や入院の場面では「法律上の家族」と「実際の支援者」を分けて考える必要がある

事実婚の場合、

「パートナーが病院で家族として認めてもらえないのでは?」

と心配する人もいるでしょう。

ただし、ここは「事実婚だから一律に手術の同意ができない」「法律婚なら必ず同意できる」と単純には言えません。

厚生労働省のガイドラインでも、医療に関する意思決定は、まず本人の意思を尊重することが基本とされています。

また、「家族等」という言葉も、必ずしも民法上の親族だけを意味するわけではなく、本人が信頼する身近な人などを含む場合があります。

一方で、入院時の連絡先や身元保証、病院ごとの手続きなどでは、法律上の親族関係が関係する場合もあります。

つまり、

医療については「法律婚か事実婚か」だけで一律に決まるのではなく、本人の意思や医療機関の運用、個別の手続きによって異なる

と考えたほうが正確です。


では、なぜ夫婦別姓を希望する人がいるの?

ここまで読むと、

「そこまでして別姓にしたい理由って何だろう?」

と思う人もいるかもしれません。

もちろん理由は人によって違います。

代表的なものを見てみましょう。

1.仕事上の名前を変えたくない

研究者であれば論文。

作家であれば著書。

会社員や経営者であれば、取引先や顧客との関係。

長年使ってきた姓そのものが、仕事上の信用や実績と結びついている場合があります。

結婚によって姓が変わると、

「以前の実績と現在の名前が同じ人物だと分かりにくくなる」

と感じる人もいます。

特に、仕事上の名前を長年使っている人にとっては、単なる名前の変更以上の意味を持つ場合があります。


2.自分の名前を変えたくない

「生まれたときから使ってきた名前だから、そのまま使いたい」

という考え方もあります。

名前は単なる記号ではなく、自分自身を表すものでもあります。

そのため、

「結婚したら名前を変えることが当然なのではなく、自分の名前を維持したまま結婚したい」

と考える人がいるのも不思議ではありません。


3.改姓に伴う手続きが大変

結婚によって姓が変わると、さまざまな場面で氏名変更の手続きが必要になることがあります。

例えば、

  • 運転免許証
  • マイナンバーカード
  • 銀行関係
  • クレジットカード
  • 各種資格・免許
  • 勤務先の登録
  • 保険関係
  • 不動産関係
  • 海外渡航・入国関係

などです。

現在はマイナンバーカードや運転免許証などで旧姓を併記できる制度も整備されています。

しかし、旧姓を使える範囲や手続きは制度・サービスによって異なります。

そのため、

「旧姓を使えるようになったから、姓を変更しても何も問題ない」

とも、

「姓を変えたらすべての場面で必ず不便になる」

とも一概には言えません。

実際には、制度ごとに確認する必要があります。


夫婦の約94%は「夫の姓」を選択している

ここは数字で見ると分かりやすいところです。

内閣府男女共同参画局のデータによると、2024年に婚姻届を提出した夫婦のうち、

94.1%が夫の姓を選択し、5.9%が妻の姓を選択しています。

つまり、現在の制度では、実際に姓を変更している人の大部分が女性という状況になっています。

この数字を背景として、

「制度上は夫婦どちらの姓を選んでもよいことになっているものの、実際には女性側が姓を変更するケースが圧倒的に多い」

という指摘があります。

一方で、

「夫婦が同じ姓を名乗ることで家族としての一体感を感じられる」

と考える人もいます。

このように、夫婦の姓をめぐる議論には、個人の利便性だけではなく、

家族のあり方をどう考えるのか

という問題も関係しています。


海外では夫婦の姓をどうしている?

では、日本以外の国ではどうなっているのでしょうか?

実は、世界の制度は一つではありません。

国によって、

  • 夫婦が同じ姓か別姓かを選べる
  • 結婚しても原則として姓が変わらない
  • 配偶者の姓を通称として使用できる

など、さまざまな制度があります。

法務省が2026年7月までに行った調査では、イギリス、アメリカ、ドイツ、スイス、タイ、トルコなどが「夫婦同氏と夫婦別氏の選択を認めている国」として挙げられています。

一方、フランスは夫婦別氏を定める国として紹介されています。

そして法務省は、把握する限りでは、

結婚後に夫婦のどちらか一方の氏を必ず選ばなければならない制度を採用している国は日本だけ

としています。

ここで注意したいのは、

「海外は全部、自由に別姓を選べる」

というわけではないことです。

姓に関する制度は国によってかなり違います。


日本では「選択的夫婦別姓」はまだ導入されていない

ここまで見てきたように、現在の日本では、

法律婚をする場合、夫婦は同じ姓を名乗る必要があります。

そのため、

「結婚しても、それぞれ今の姓を使いたい」

という夫婦は、現在の制度では法律婚をしたまま別姓を選ぶことができません。

そこで、

  • 事実婚を選ぶ
  • どちらかが姓を変更する
  • 法律上の姓は変更したうえで旧姓・通称を使う

といった対応が考えられます。

ただし、それぞれにメリットだけでなく、制度上の違いや手続き上の負担があります。

一方、選択的夫婦別姓制度が導入されれば、別姓を希望する夫婦も法律婚を選択できるようになる、というのが制度の基本的な考え方です。

なお、2026年現在もこの問題は国会で議論が続いており、選択的夫婦別姓の導入を求める法案や請願なども提出されています。


「夫婦は同じ姓であるべき?」それとも「選択できるべき?」

夫婦別姓について考えると、

「家族なら同じ姓のほうがいい」

という考え方もあれば、

「結婚しても自分の姓を維持できる選択肢があってもいい」

という考え方もあります。

そして、どちらの考え方を持つかによって、制度に求めるものも変わってきます。

大切なのは、単純に

「夫婦別姓=良い」

「夫婦同姓=古い」

のように決めつけることではなく、

現在の制度では誰にどのような負担が生じているのか。

そして、

制度を変更した場合には、どのような新しい課題が出てくるのか。

この両方を見ることではないでしょうか。

選択的夫婦別姓は、単に「名字を変えるか、変えないか」という話だけではありません。

戸籍、子どもの姓、親子関係、相続、税制、仕事、社会生活など、さまざまな制度と関係するテーマです。

だからこそ、ニュースで「夫婦別姓」という言葉を見かけたときには、賛成・反対だけでなく、

「現在の制度ではどうなっているの?」

「もし制度が変わったら何が変わるの?」

という視点から見てみるのも面白いのではないでしょうか。

皆さんは、選択的夫婦別姓についてどう考えますか?

「夫婦は同じ姓のほうがいい」

「別々の姓を選べるようにしてほしい」

「どちらでも選べるようにするのがいい」

など、いろいろな考え方があると思います。

よかったら、皆さんの意見もコメントで教えてくださいね。

それではまた別の記事でお会いしましょう


🟡 おまけコーナー:「明日って何の日?」

10月24日

【軽貨物の日】

軽貨物業界の健全な発展や、ドライバーの法令順守・モラル向上への周知、そして業界が抱える課題を広く社会に知ってもらうことを目的に、一般社団法人軽貨物ロジスティクス協会によって2023年に制定され、日本記念日協会に登録されました。

由来と背景

日付は、2022年10月24日に国土交通省が「軽貨物車両の自由化」を発表したことに由来しています。

それ以前は、黒ナンバー(営業用ナンバー)を取得して軽貨物配送ができるのは「商業用の軽自動車(軽バンや軽トラックなど)」に限られていました。しかし、この自由化によって、普段の買い物や通勤に使っているような「一般用の自家用軽乗用車」でも軽貨物運送事業への登録が可能になりました。

記念日が持つ意味

軽貨物車両の自由化は、ドライバー不足の解消や副業としての参入障壁を大きく下げた一方で、以下のような新たな課題を生むきっかけにもなりました。

  • モラルの低下や法令違反の懸念
  • 無認可(白ナンバー)での違法な運送業務の防止
  • 過積載や損害賠償能力(任意保険の加入など)の義務化の徹底

「軽貨物の日」は、こうした配送業務における安全と法令順守(コンプライアンス)を改めて業界全体で考える日として、また、日本の物流インフラを支える軽貨物ドライバーの社会的地位向上や労働環境の改善(魅力ある職場づくり)を訴えかける日として位置づけられています。