家族だけに頼れない時代へ――成年後見制度の基礎とこれから

皆さんは、自分が将来高齢者になったときのことを考えたことがありますか?
若い世代では「まだまだ先の話」と思うかもしれませんが、日本は世界でも類を見ないスピードで高齢化が進んでいます。厚生労働省の推計によると、2040年には認知症患者が584万人に達するとされ、もはや「他人事ではない」状況になってきています。

高齢になり判断能力が低下したとき、日常生活の中で必要な契約や財産管理を誰が支えてくれるのか――。家族がそばにいれば安心ですが、核家族化や単身世帯の増加により「家族に任せられない」というケースも少なくありません。
そんな時に役立つのが 「成年後見制度」 です。今回は、この制度の仕組みや課題、今後の展望についてわかりやすく解説していきます。


成年後見制度とは?

成年後見制度とは、認知症・知的障害・精神障害などによって判断能力が不十分になった人の権利や財産を守り、生活をサポートする制度です。

成年後見人等が本人に代わって財産の管理を行ったり、介護サービスや施設入所の契約を結んだりすることができます。制度には大きく分けて2種類があります。


1. 法定後見制度

すでに判断能力が低下している場合に、家庭裁判所が後見人を選任する制度です。本人の状況に応じて次の3つに分類されます。

  • 後見:常に判断能力が欠けている人が対象。後見人が財産管理や契約行為を包括的に代理します。
  • 保佐:判断能力が著しく不十分な人が対象。重要な法律行為には保佐人の同意が必要で、家庭裁判所の判断により代理権が付与されることもあります。
  • 補助:判断能力が一部不十分な人が対象。特定の法律行為について補助人の同意や代理権が認められます。

2. 任意後見制度

こちらは「元気なうちに将来へ備える」ための仕組みです。

  • 本人の判断能力が十分なうちに、公証役場で任意後見契約を結び、将来の後見人をあらかじめ指定します。
  • 実際に判断能力が低下した際には、家庭裁判所が任意後見監督人を選任し、契約の効力が発生します。
  • 任意後見人は監督人のチェックを受けながら、契約内容に基づいて財産管理や生活支援を行います。

「自分の意思を反映しやすい」という点で、任意後見制度の重要性は今後ますます高まると考えられています。


成年後見制度の需要は今後どうなる?

超高齢化社会の進行に伴い、この制度の需要は確実に高まると見込まれています。

需要が高まる背景

  • 認知症患者の増加:2040年には584万人に達すると予測されており、判断能力の低下に備える人は今後も増えていきます。
  • 家族に頼れない時代:核家族化や単身世帯の増加により、家族だけで支援を担うのは難しくなっています。
  • 消費者被害の増加:判断力の低下した高齢者が悪質商法などの被害に遭うケースが増加。財産や権利を守るための仕組みが必要です。

直面する課題

一方で、制度の利用は伸び悩んでいます。

  • 利用率の低さ:潜在的なニーズは約1,000万人と推定されるのに対し、2023年の実利用者は約25万人(わずか2.5%)。
  • 手続きの複雑さ:家庭裁判所での申立てや費用負担が利用のハードルになっています。
  • 不祥事の懸念:後見人による財産の不正利用が後を絶たず、制度への信頼性を損ねています。
  • 担い手不足:親族後見が減少し、専門職後見人への依存度が高まっていますが、数が足りていないのが現状です。

今後の展望

こうした課題に対し、国や自治体でも改善策が検討されています。

  • 法改正の議論:後見人の交代制や権限の見直しが進められています。
  • 利用促進法の施行:2016年に「成年後見制度利用促進法」が成立し、制度の周知・改善が進められています。
  • 市民後見人の活用:地域住民が後見人となる仕組みが広がり、担い手不足を補う試みが始まっています。

まとめ:自分ごととして考えるために

成年後見制度は、これからの日本社会で欠かせない仕組みの一つです。
「自分が認知症になったらどうするか?」というのは誰にとっても避けられないテーマであり、早いうちから情報を知っておくことが大切です。

皆さんは、自分の将来を誰に託したいですか?
家族、友人、あるいは制度を通じた後見人――。
もし少しでも不安を感じるなら、今のうちに成年後見制度について学び、備えてみてはいかがでしょうか。

それではまた別の記事でお会いしましょう


🟡 おまけコーナー:「明日って何の日?」

😉10月11日

【ウインクの日】

ウインクの日は、数字の10と11を横に倒した形がウインクしているように見えることに由来する記念日です。10月11日には「オクトーバーウィンク」という呼び名もあり、この日に好きな人に気持ちが伝わるようにおまじないとしても親しまれています。

おまじない・ジンクス

このおまじないは、女子中学生の間で流行したことがきっかけで「ウインクの日」として定着したと言われています。

この日には「ウインクのジンクス」があり、朝起きてすぐに好きな人の名前の文字数だけウインクをすると、その人に気持ちが伝わるというおまじないがあります。