ギラン・バレー症候群(Guillain-Barré syndrome)という病名を聞いたことはありますか?急に手足の力が入りにくくなる、比較的まれな病気ですが、日本では特定疾患として難病に指定されており、誰にでも起こりうる可能性があります。この記事では、ギラン・バレー症候群がどのような病気なのか、その原因や症状、そして日本での現状について、わかりやすく解説します。
ギラン・バレー症候群とは?
ギラン・バレー症候群は、末梢神経が何らかの原因でダメージを受けることで、急激に筋力が低下していく自己免疫疾患です。通常、私たちの体の免疫システムは、外部から侵入してきたウイルスや細菌などの異物を攻撃・排除する役割を担っています。しかし、ギラン・バレー症候群では、この免疫システムが誤って自分自身の末梢神経を攻撃してしまいます。
主な症状は、手足のしびれや筋力低下です。多くの場合、足先から症状が始まり、上に向かって進行していくのが特徴です。症状が進むと、歩くことが難しくなったり、顔の筋肉が麻痺したり、重症の場合は呼吸に必要な筋肉まで麻痺し、人工呼吸器が必要となることもあります。
原因と発症のきっかけ
ギラン・バレー症候群の最も一般的な原因は、感染症です。特に、風邪や下痢などの消化器系の感染症にかかった後、数日から数週間後に発症することが多いとされています。
主な原因となる感染症
- カンピロバクター・ジェジュニ: 食中毒の原因となる細菌で、ギラン・バレー症候群の発症と最も関連が深いとされています。
- ウイルス: サイトメガロウイルス、EBウイルス、インフルエンザウイルス、新型コロナウイルスなど。
- 細菌: マイコプラズマなど。
これらの感染症にかかることで免疫システムが活性化され、その過程でなぜか自分の末梢神経を攻撃してしまう「自己免疫反応」が起こると考えられています。
また、まれにワクチン接種、手術、外傷などがきっかけで発症することもあります。
早期発見と治療の重要性
ギラン・バレー症候群は、早期に適切な治療を開始することで、重症化を防ぎ、回復を早めることが期待できます。症状に気づいたら、すぐに医療機関を受診することが大切です。
主な治療法
- 免疫グロブリン大量静注療法: 健康な人の血液から精製した免疫グロブリンを大量に点滴で投与し、免疫システムの暴走を抑えます。
- 血漿交換療法: 体外に血液を取り出し、神経を攻撃している抗体などを除去してから体内に戻す治療法です。
多くの場合は数ヶ月から1年で回復に向かいますが、後遺症が残ったり、再発することもあります。症状が落ち着いた後も、継続的なリハビリテーションが重要となります。
日本での現状と医療費助成について
ギラン・バレー症候群は、日本でも特定疾患に指定されています。年間10万人に1〜2人程度が発症すると推定されており、感染症の流行状況によって患者数が増加する可能性もあります。
以前は医療費助成の対象外でしたが、2015年1月に施行された**「難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)」により、指定難病の対象となり、医療費助成を受けることが可能**になりました。ただし、助成を受けるには、定められた重症度基準を満たす必要があります。
ギラン・バレー症候群の対策と予防
ギラン・バレー症候群を完全に予防することは難しいですが、発症の引き金となりうる感染症を予防することはできます。
- 手洗いやうがいをこまめに行う。
- 食肉は中心部まで十分に加熱し、食中毒を予防する。
- 風邪や下痢などの症状が出たら、無理せず十分な休養をとる。
もし急に手足のしびれや力が入りにくいといった異変を感じたら、ためらわずに医療機関を受診してください。早期の診断と治療が、回復への第一歩となります。
それではまた別の記事でお会いしましょう
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