なぜ給料が上がっても苦しいのか?所得税の仕組みと「インフレ増税」の問題点

所得税の課税方法はもう時代遅れ?物価高でも手取りが増えない理由を解説

皆さんは毎月の給与明細をじっくり見たことがありますか?

「今月も結構引かれているな…」

そう感じたことがある方は多いと思います。

会社員であれば、所得税や住民税、社会保険料などが毎月の給与から天引きされています。しかし、自分がどれくらいの所得税を支払っているのか、またその税率がいつ決められたものなのかを知っている人は意外と少ないかもしれません。

実は現在の所得税の税率区分は、2015年の税制改正で決められたものが基本となっています。

その後、日本では大きな物価上昇が起こり、多くの企業で賃上げも進みました。それにもかかわらず、税率の区分はほとんど変わっていません。

そこで今回は、日本の所得税制度の歴史を振り返りながら、「なぜ今の経済状況と税制にズレが生じているのか」について考えてみたいと思います。


所得税の累進課税制度はいつから始まった?

日本で所得税が導入されたのは1887年(明治20年)です。

なんと今から約140年前のことになります。

当時の明治政府は近代国家としての税制度を整備するため、ドイツ(当時のプロイセン)の制度を参考に所得税を導入しました。

そして、その時からすでに現在につながる「累進課税制度」が採用されていました。

累進課税とは、所得が増えるほど高い税率が適用される仕組みです。

例えば年収300万円の人と年収3000万円の人が同じ税率で課税されると、低所得者の生活が成り立たなくなる可能性があります。

そこで、

「負担できる人がより多く負担する」

という考え方に基づき、所得に応じて税率を変える仕組みが導入されました。

現在では当たり前の制度ですが、その歴史は非常に長いのです。


現在の税率区分はいつ決まったのか?

現在の所得税率は2015年の税制改正で導入されたものです。

つまり2026年現在、約11年間ほぼ同じ区分が使われ続けています。

現在の税率は以下の7段階です。

課税所得税率
195万円以下5%
195万円超~330万円以下10%
330万円超~695万円以下20%
695万円超~900万円以下23%
900万円超~1800万円以下33%
1800万円超~4000万円以下40%
4000万円超45%

ちなみに1970年代には19段階もの税率区分が存在し、最高税率は70%にも達していました。

時代によって税率や区分は大きく変化してきたのです。


しかし2026年の日本は11年前とは大きく違う

2015年当時と比べると、現在の日本は大きく環境が変わりました。

特に変化が大きいのは次の2つです。

  • 物価の上昇
  • 賃金の上昇

ここ数年は食料品や電気代、ガソリン代など生活に欠かせないものの価格が大幅に上昇しています。

企業も賃上げを進めていますが、多くの人が

「給料は上がったはずなのに生活が楽にならない」

と感じているのではないでしょうか。

その理由の一つとして指摘されているのが、税率区分が物価上昇に対応していない問題です。


「ブラケット・クリープ」とは何か?

経済学ではこの現象を

ブラケット・クリープ(Bracket Creep)

と呼びます。

日本語では「インフレ増税」と呼ばれることもあります。

例えば物価が5%上昇した場合、本来なら給与も5%程度上がらなければ生活水準を維持できません。

しかし給与が上がると税金の計算上は所得が増えたことになります。

その結果、より高い税率区分へ移動してしまう場合があります。

つまり、

生活は豊かになっていないのに税負担だけ増える

という現象が起きるのです。

これは実質的な増税と同じ効果を持ちます。


基礎控除も物価高に追いついていない

問題は税率区分だけではありません。

所得税の計算では基礎控除や給与所得控除などが差し引かれます。

しかし、これらの基準額も物価上昇に十分対応しているとは言えません。

もし物価が上がれば、生活に必要な最低限の支出も増えます。

それにもかかわらず控除額が据え置かれていれば、結果として課税対象となる所得が増え、税負担も重くなります。

アメリカなどでは税率区分や控除額を物価上昇率に連動させる仕組みが導入されています。

一方、日本ではその仕組みが十分ではないため、インフレ時には国民負担が自然と増えてしまう構造になっています。


このまま税率区分が変わらなかったらどうなる?

仮に現在の税率区分を今後も維持した場合、どのような影響が考えられるのでしょうか。

① 手取りが増えにくくなる

賃上げされても税負担が増えるため、実際に自由に使えるお金は思ったほど増えません。

② 生活水準が下がる

物価上昇に手取りの伸びが追いつかなくなり、実質的な購買力が低下します。

③ 中間層の負担が重くなる

本来は高所得者向けだった税率区分に、一般的な会社員が入りやすくなります。

④ 貯蓄や投資に回せるお金が減る

教育費や老後資金の準備、新NISAなどの資産形成に使える余裕が少なくなります。

⑤ 働く意欲の低下につながる可能性

「頑張って昇給しても手取りが思ったほど増えない」

そう感じる人が増えれば、労働意欲にも影響を与える可能性があります。


政府にも事情はある

もちろん政府側にも事情があります。

少子高齢化による社会保障費の増加、防衛費の拡大、インフラ維持費など、多くの財源が必要だからです。

税収が減れば、その穴埋めをどこかで行わなければなりません。

そのため政府は税率そのものを見直すよりも、定額減税や給付金などの一時的な対策を選ぶ傾向があります。

しかし、それで根本的な問題が解決するのかという疑問も残ります。


まとめ

所得税の累進課税制度は約140年前に導入されました。

そして現在の税率区分は2015年からほぼ変わっていません。

問題は、その間に日本の経済環境が大きく変化したことです。

物価が上がり、賃金も上がる中で税率区分や控除額が据え置かれれば、実質的な増税が発生する可能性があります。

もちろん税収は国の運営に欠かせません。

しかし、国民の生活が苦しくなってしまっては本末転倒です。

今後は賃上げだけでなく、税率区分や控除額を物価上昇に合わせて見直す議論も必要ではないでしょうか。

皆さんは現在の所得税制度についてどう思いますか?

物価高の時代に合わせて見直すべきだと思いますか?

それとも現状維持が妥当だと思いますか?

ぜひ一度、給与明細を見ながら考えてみてください。

それではまた別の記事でお会いしましょう


🟡 おまけコーナー:「明日って何の日?」

7月10日

【ウルトラマンの日】

「ウルトラマンの日」とは、ウルトラマンが日本のテレビに初めて登場したことを記念する日です。一般社団法人・日本記念日協会によって公式に認定・登録されています。

記念日の由来や背景にある面白いエピソードは以下の通りです。

1. 記念日の由来

1966年(昭和41年)7月10日、テレビ番組『ウルトラマン』の本放送が始まる1週間前に、特別番組『ウルトラマン前夜祭 ウルトラマン誕生』がTBS系列で放送されました。
この番組でウルトラマンやウルトラ怪獣、科学特捜隊、そして「特撮の父」である円谷英二監督がテレビに初めて姿を現したため、この日が記念日となりました。

2. 前夜祭が放送された大人の事情

実は、本来の第1話(「ウルトラ作戦第一号」)は7月17日に放送される予定でした。しかし、当時の制作スケジュールが非常に厳しく、第1話のフィルム納品が7月10日の放送枠に間に合わないというハプニングが発生しました。
その穴埋めとして、急遽、放送前日に東京の杉並公会堂で開かれた番組PRイベントの模様を公開録画中継として放送することになり、怪我の功名でこの記念すべき日が誕生しました。

3. 現在のウルトラマンの日

毎年7月10日前後になると、円谷プロダクションの公式X(旧Twitter)で特別な記念ビジュアルが公開されたり、さまざまなファンイベントやグッズ販売が行われたりします。
ちなみに、2026年はウルトラマンシリーズが放送開始60周年を迎えるアニバーサリーイヤーとなっており、原点の地である杉並公会堂にて大規模イベント「ウルトラマンの日 in 杉並公会堂」の開催などが企画されています。