日本人はなぜ「人並み」を気にしてしまうのか?
普段の生活の中で、
「みんなと違うことをすると不安になる」
そんな感覚を覚えたことはありませんか?
たとえば ―
平日に休みを取って遊びに行く。
会社員を辞めてフリーランスになろうと決意する。
そんな自分の選択に対し、
「悪いことをしてるわけじゃないのに、なんとなく後ろめたい…」
そんな気持ちになる瞬間があります。
その裏側には、日本社会に深く根付いた 「人並み」 という価値観が存在しています。
今回は、この「人並み」という言葉がどこから来て、今どんな意味を持ち、そしてこれからどう変わっていくのかを考えてみたいと思います。
■ 日本で「人並み」が重視される理由
日本における「人並み」は、単なる “平均的” という意味以上の重みを持っています。その背景には、文化・歴史・社会構造が複雑に絡み合っています。
① 「和」を重んじる文化と集団主義
日本には「和を以て貴しとなす」という思想があります。
これは、集団の調和を乱さず、協力しながら生きていくことを重んじる考え方です。
その中では、
“目立たず、波風を立てず、周囲と同じ行動をすること”
が「良いこと」とされやすい傾向があります。
「人並み」でいるということは、
集団の一員として認められるための 暗黙のルール とも言えます。
② 「出る杭は打たれる」という社会心理
日本人が避けたいものの1つが 集団から浮くこと。
文化的に、「出る杭は打たれる」という言葉の通り、
目立つ行動や常識から外れる行動は時に批判の対象となりやすく、
無意識に“人並み”に合わせる心理が働きます。
③ 空気を読むというコミュニケーション文化
日本では、直接的なコミュニケーションよりも、
“察する”“空気を読む”ことが重視されます。
そのため「基準が曖昧な場」では、
他人の行動を参考にしながら
「平均的=人並み」の行動に寄せる 傾向が強まります。
④ 「人並み」は安心感を与えてくれる
誰もがやっている行動を選ぶと、
「これなら間違いない」という安心感につながります。
リスクを避けたい心理が、
「人並みに生きておけば安全」という感覚を生みやすいのです。
■ 現代社会の歪みと「人並み」への不安
では現代の日本ではどうでしょうか?
答えは ― やっぱりまだ、人並みでないと生きづらい。
ですが同時に、「人並み」の意味そのものも変わり始めています。
① 少子高齢化と社会保障の負担
現役世代の負担が増える一方、
将来の年金や社会保障の見通しは不透明。
「人並みに働いていれば安泰」という時代ではなくなりつつあります。
② 経済格差の固定化
親の収入、学歴、地域など、生まれ持った環境が
“スタートライン”を左右する時代。
努力しても報われないと感じやすく、
「人並み」への不安が強まりやすい背景があります。
③ 世代間の価値観ギャップ
若者は
・ワークライフバランス
・多様性
・自由な働き方
などを重視。
一方で上の世代は
・終身雇用
・家族モデルの固定化
・会社への忠誠
といった価値観もまだ根強い。
このギャップが「普通とは何か?」という認識のズレを広げています。
④ 同調圧力の中で生きづらさが増す
OECD調査でも、日本人の孤独率は先進国でも高い水準。
従来の“つながり”が弱まっている分、
人並みから外れたときの孤立感がより強くなっています。
■ これから「人並み」はどう変わっていくのか?
ここが最も重要な部分ですが、
日本の「人並み」は、今まさに大きく変わろうとしています。
① 「普通=正解」が1つではなくなる
かつての「人並み」=
・正社員
・結婚
・持ち家
・子育て
こうしたモデルは、いまや“多数派”ですらありません。
これからは、
「自分が選んだ生き方こそ普通」
という価値観が当たり前になっていきます。
② 働き方はもっと自由になる
副業、フリーランス、リモートワーク、独立。
ひとつの会社に依存しない働き方が増えています。
これからの「人並み」は、
“複数の働き方・生き方を持つ人” がむしろ当たり前になるかもしれません。
③ つながり方が多様になる
地縁や家族よりも、
・趣味
・価値観
・活動
でつながるコミュニティが主流に。
オンラインで世界とつながることができる今、
「人並みの人間関係」の形もどんどん変わっていきます。
④ 平均ではなく「自分らしさ」が基準になる
心理学的にも、
“他人と比べるほど幸福度は下がる”ことが分かっています。
これからは
「何が普通か?」より
「自分はどう生きたいか?」
が生き方の中心になります。
■ これからの社会で求められるもの
もちろん、変化には不安も伴います。
- 世代間ギャップ
- 自己責任論の強まり
- 正解が見えにくい時代の迷い
こうした課題もありますが、
社会は少しずつ 多様な生き方を受け入れる方向へ進んでいます。
制度や働き方も柔軟になり、
「みんな違っていい」という価値観が確実に広まりつつあります。
■ おわりに:人並みは変わる。私たちも変われる。
日本人にとって「人並み」という言葉は、
良くも悪くも、深く浸透した価値観です。
筆者の私自身も、
「人並みじゃないと不安」
と感じる瞬間が何度もありました。
でも、人並みという言葉はこれから変わります。
そして私たちも、それぞれのペースで変わっていい。
多様性が求められる時代の中で、
「人並み」そのものがアップデートされていくのを
少し楽しみながら見守っていきたいですね。
それではまた別の記事でお会いしましょう
🟡 おまけコーナー:「明日って何の日?」
12月10日
【いつでもニットの日】
「いつでもニットの日」とは、12月10日に制定された記念日です。
この記念日は、山形県山辺町(サマーニット発祥の地として知られています)によって制定されました。
目的と由来:
- 日付は、「い(1)つでもニット(210)」という語呂合わせと、ニット製品の需要が高まる初冬の時期であることに由来しています。
- 一年を通して多くの人にニットに親しんでもらい、国内のニット産業を活性化させることを目的としています。
なお、2月10日も「ニットの日」として日本ニット工業組合連合会などが制定しており、こちらは「ニ(2)ット(10)」の語呂合わせです。