あなたのスマホにも“遺産”が？
デジタル遺産トラブルとデジタル終活のすすめ
インターネットが生活の一部となった今、銀行口座の管理から買い物、娯楽まで、ほとんどのことがオンラインで完結するようになりました。
読者の皆さんの中にも、ネット銀行やサブスクリプションサービス、電子マネーなど「デジタルだけで完結する契約」を利用している方は多いのではないでしょうか。
これらのサービスは便利である一方、**“デジタル時代ならではの相続トラブル”**を生む原因にもなっています。
もし、家族が突然亡くなったとき、パスワードが分からずログインできない…契約の解約もできない…。そんな問題が実際に多発しているのです。
今回は、「デジタル遺産」と「デジタル終活」について、分かりやすく解説していきます。
■ デジタル遺産とは？
「デジタル遺産」とは、故人がインターネット上に保有していた金銭的価値を持つ資産のことを指します。
実体こそありませんが、**法的には相続の対象となる“財産”**です。
代表的なデジタル遺産の例：
- ネット銀行やネット証券の口座
- 暗号資産（仮想通貨）
- 電子マネー（Suica、楽天Edyなど）
- クレジットカードのポイントやマイレージ
- デジタルの著作物やNFT（デジタルアート・音楽など）
- 有料オンラインストアで購入済みのコンテンツ
これらは“ネット上のお金や資産”ですが、存在に気づかれなければ相続もされず、永遠に消えてしまう可能性があります。
■ デジタル遺品との違い
混同されやすいのが「デジタル遺品」です。
デジタル遺産が「価値のある資産」を指すのに対し、デジタル遺品は「思い出やデータを含むすべてのデジタル情報」を指します。
デジタル遺品の例：
- スマホやPC内の写真・動画・メール
- SNSアカウント（X、Instagram、LINEなど）
- クラウドに保存されたデータ
- サブスクなどの契約情報
つまり、「デジタル遺産＝お金になるもの」、「デジタル遺品＝思い出や記録も含むもの」と覚えておくと分かりやすいですね。
■ デジタル遺産が引き起こすトラブル
便利なはずのデジタル資産が、相続の場面では厄介な存在になることがあります。主な問題点は以下のとおりです。
1. 遺産の存在に気づかれない
通帳や現金と違い、形がないため、存在そのものに気づかないケースが多いです。
結果として、遺産が“埋もれたまま”になってしまうことも。
2. パスワードが分からずアクセスできない
セキュリティ対策として本人しか知らないパスワードを設定していた場合、遺族がログインできず、資産の確認や解約ができないことがあります。
3. 法的・手続き上の壁
各サービスごとに相続対応の方針が異なり、遺族が個別に問い合わせ・証明を行う必要があります。
また、日本では法整備がまだ追いついていない分野でもあり、ケースバイケースの対応が求められます。
4. 実際のトラブル事例
- 仮想通貨にアクセスできず、数百万円が消失
- 定額制サービスが解約できず、毎月料金が引き落とされ続けた
- 相続税申告に漏れがあり、後から追徴課税を受けた
- SNSアカウントを巡って遺族間で対立が起きた
■ デジタル終活とは？
「デジタル終活」とは、自分が亡くなったあとに家族が困らないよう、生前にデジタル情報を整理・引き継ぐ準備をすることです。
特に最近では、SNSやクラウド、スマホの中に多くの個人情報が詰まっているため、放置すると情報流出や不正アクセスのリスクも高まります。
■ デジタル終活のポイント
① デジタル資産のリスト化
まずは、自分が利用しているサービスを洗い出してみましょう。
ネット銀行、証券、電子マネー、サブスクなど、「お金に関わるもの」から優先的にリスト化します。
② アカウント情報の保管と共有
IDやパスワードを紙やノートに書いておくのは避けたいところ。
代わりに「エンディングノート」や「デジタル資産管理ツール（例：Googleパスワードマネージャー）」を使い、信頼できる家族1人にだけ共有しておくのがおすすめです。
③ 不要なデータの整理・削除
もう使っていないアプリやSNSアカウント、不要な写真・メールなどは定期的に削除しておきましょう。
「何を残したいか」「何を消したいか」を自分で決めておくことが大切です。
④ デジタル遺言の作成
遺言書やエンディングノートで、「死後にデータをどう扱ってほしいか」を明記しておくと安心です。
「写真は家族だけが見られるように」「SNSアカウントは削除してほしい」など、具体的な指示を残すのも良いでしょう。
■ まとめ：今こそ“デジタル終活”を始めよう
もしかすると、あなたのスマホやパソコンの中には、**自分でも忘れている“デジタル資産”**が眠っているかもしれません。
家族もそれを知らなければ、相続も解約もできずにトラブルになる可能性があります。
デジタル終活は、「死を意識する準備」ではなく、家族への思いやりとリスク管理の一環です。
小さな一歩でも構いません。今日から、自分のデジタル資産を少しずつ整理してみてはいかがでしょうか。
それではまた別の記事でお会いしましょう
🟡 おまけコーナー：「明日って何の日？」
11月23日
【ラク家事の日】
「ラク家事の日」は、パナソニック コンシューマーマーケティング株式会社（現 パナソニックマーケティングジャパン株式会社）によって制定された記念日です。
主な目的と由来は以下の通りです。
- 家事への感謝と負担軽減: 勤労感謝の日と同じ日付にすることで、普段家事をしている人への感謝の気持ちを伝えるとともに、家事の負担軽減（ラク家事）について考えるきっかけを作ることを目的としています。
- 「いい夫婦の日」の翌日: 11月22日の「いい夫婦の日」の翌日であることも、夫婦で家事について考える機会を促す狙いがあります。
- 認定: 一般社団法人日本記念日協会によって認定・登録されています。
この記念日を通じて、家族やパートナーが家事に協力し、「共家事（ともかじ）」を推進することも呼びかけられています。